SUPER GT 第6戦 レースレポート
開催 サーキット |
オートポリス(4.674km) | |
日時 | 10月23日(土) | 10月24日(日) |
来場者 | 6,500人 | 10,300人 |
天候 | 晴れ時々曇り・ドライ | 曇り・ドライ |
気温 | 14-14℃ | 12-12℃ |
路面温度 | 26-25℃ | 20-18℃ |
予選:レース内容
2020年はコロナ禍の影響で開催されず、2年ぶりとなる九州ラウンド。オートポリスにSUPER GTが帰ってきた。 第6戦は、サクセスウエイトが最も重い戦いとなる。第5戦まで獲得する1ポイントに対して2kgのサクセスウエイトが搭載され、 TGR TEAM au TOM’S36号車は、第2戦の富士ラウンドでメカニカルトラブルによってリタイヤをした以外は、全てのレースでポイントを獲得しており、第5戦を終えてランキング4位。40ポイントを獲得しているので、サクセスウエイトは80kgと重いが、厳しい状況下においても可能な限り多くのポイントを獲得するべく、予選で上位グリッドを目指した。上位8番手までがQ2に進出できるが、12番手に終わり、Q1突破はならず。ランキングトップのNSX1号車とともに予選を終えた。
●トータルポイント40点。サクセスウエイトは80kg(実ウエイト46kg。燃料供給リストリクター2段階)
●これまで坪井翔がQ1を担当していたが、今回は、関口雄飛がQ1のアタックを行なった。
●コースインして3周目、4周目でアタック。
●午前中の練習走行では1分33秒994がベストタイム。1分32秒台に突入できるかと思われた。しかし、予選Q1でタイムは、1分33秒012まで詰めたものの、32秒台にはわずかに届かず、順位は12番手。
●Q1突破はならず、6列目のグリッドから65周の決勝をスタートすることとなった。
Driver | Q1 | Q2 |
関口 雄飛 | P12 1’33.012 | ー |
坪井 翔 | ー | ー |
予選:ドライバー・エンジニアコメント
関口 雄飛
36号車ドライバー
チームにお願いしてQ1を担当させてもらいました。これまで、Q2を担当してきましたが、前回第5戦、第3戦でQ2に進出できなかったので、自分も予選のアタックをしたいという気持ちがあり、お願いしました。練習走行から予選に向けてマシンのセッティングは方向性が良くて、変えてもらったことが上手く反応していたし、自分でもミスはなかったので、12番手という結果はどうしてなのか、首を捻ってしまいます。予選を終えて、37号車とデータロガーを比較してみたのですが、コーナリングのスピードは負けているところがなかった。やはり、燃リス(燃料リストリクター)の影響がストレートスピードに出てましたね。コーナリングは、37号車と+ーゼロか、こっちの方が速かったくらいだった。うちよりも重いスープラの14号車(Q1-3番手)、NSXの17号車(Q1-7番手)が速すぎた。ボクらのバランスは悪くないので、重い車に負けたのが、なぜなのかという思いです。まあ、タイヤのチョイスは決勝重視なので、決勝ではいつものように逆転してやろうと思っています。ランキングトップのNSX1号車の前でゴールすることを目標にしています。
坪井 翔
36号車ドライバー
今回も練習走行で、マシンのセッティングとタイヤチョイスを主に担当させてもらいました。2年ぶりのオートポリスですから、2019年とはコンディションも違っていますし、コースの状況に合わせて、どのタイヤを選ぶかが少し難しかったですが、それ以外の部分は順調に進めることができました。結果を見ると、思った以上に周りのマシンのペースが速いですよね。ランキングを争っているNSXの17号車が前に行ってしまった。NSXはなぜあんなに速いのかという思いですが、ランキングトップのNSXの1号車の前には位置しているので、そのまま前でフィニッシュして、17号車も抜ければと思っています。同じスープラの14号車がすごく速いのもクエッションマークですね。でも、14号車はエンジン交換ペナルティでピットストップがあるので、後ろに回るとボクたちが前に行けますよね。今まで予選より決勝でパフォーマンスを発揮できていますから、明日の決勝は順位を上げられると考えています。そして決勝では、予選よりも各車の差が出やすい状況であると思うので、決勝に強いセットアップで臨めば良い結果が残せると思います。
吉武 聡
レースエンジニア
ウエイトと燃料リストリクターが最も厳しい第6戦ですが、それなりの予選順位だったのかなという思いと、もう少し行けたかなという思いがあります。リストリクターの影響で、どうしてもストレートのスピードが伸びない中、コーナリングのスピードは37号車と比較してもそれほど遅くはなく、遜色ありません。決勝に向けて、問題というほどではないですが、改善しなくてはならない点があります。タイヤチョイスも決勝を見据えたものです。ブリヂストンさんのタイヤの中でもスープラ勢の中で最も決勝を重視したものです。グリッドのすぐ後ろに、最大のライバルである、NSXの1号車が居るというのが気がかりです。そしてポイント争いをしている17号車はQ2に進出しているので、なんとかその2台の前ではフィニッシュしたいと思っています。エンジン交換のペナルティで、チームメイトの37号車を含む3台のスープラが、決勝の序盤にピットストップするので、そこで順位を上げることができると思っています。ポイント圏内、2台のNSXの前でフィニッシュすることが目標です。
東條 力
チーフエンジニア
12番手の結果は、サクセスウエイト56kg、燃料リストリクター2段階を考えれば、ここいらが順当なのかと判断しています。2年ぶりのオートポリスに臨み、状況を考えれば予選で苦しいのはあたりまえですから、決勝重視の作戦で乗り込んできました。データを見ると36号車のパフォーマンスは悪くないと思います。ストレートスピードはリストリクターの影響で、いた仕方ないですよね。スープラの中で一番速い14号車は、我々より重いのですが、ストレートスピードが4kmぐらい速かった。その数値を見てちょっとビックリしましたね。何が違うのか・・・。2年ぶりのオートポリス、スープラはオートポリスが初めてということを言われますが、それをハンディであると考えてしまっていては負けです。そんなことは関係なく戦って行きます。タイヤ選択にしても、いつも通り決勝でのパフォーマンス重視でチョイスしていますから、ポイントゲット圏内。そして、より多くのポイントを獲得できるように決勝に向けて準備します。
伊藤 大輔
チーム監督
今回の結果は予想していました。現在のSUPER GTにおいては、この最大サクセスウエイトの状況下で、淡々と進めるしかないですよね。Q1を突破することができなかったのはしようがないと思いますが、ランキングを争っている同じスープラの14号車とNSXの17号車に先行されてしまっているは気がかりです。そして14号車は、ストレートのスピードがかなり速いので驚いています。毎回オートポリスではタイヤの摩耗やピックアップが予想より酷いことがありますが、ブリヂストンさんはそれを考慮してタイヤづくりをして来ていただいているので心配はしていません。ただし、他メーカーのマシンに対しても同じ対処をなさっているでしょうから、我々だけにアドバンテージがあるとは考えられません。決勝は走り出してみないとわかりませんが、昨年はオートポリスでレースをしていませんし、以前とは開催時期も違うので、直前のウォームアップでどれだけ決勝に合わせ込んだセットアップを施せるかが勝負ですね。
舘 信秀
総監督
2年ぶりの九州、オートポリス。九州のモータースポーツファンの皆さんとお会いできることが嬉しかった。36号車はウエイトが80kgだから、苦戦を強いられることは覚悟していたが、その中では健闘したのではないか・・・と思っていたら、チャンピオンを争っているNSXの17号車がQ1を突破していた。NSXのしぶとさ、強さは凄い。この第6戦で何とか我々の上位にいるNSXよりも前でスタートし、決勝でも前でフィニッシュすることを目標にして来たが、17号車に前へ行かれてしまった。ランキングトップのNSXの1号車の前で予選を終えることができたけれど、すぐ後ろのグリッドにいるので、こちらもうかうかしていられないし、スープラにとっては初のオートポリスであって、不確定な部分もあるけれど、12番手のグリッドから順位アップして、できるだけ多くのポイントを獲得して終盤戦に臨みたい。
決勝:レース内容
阿蘇山の外輪山に位置するオートポリスは、秋真っ只中。天気予報は、予選日よりも好転すると言っていたが、予報に反して気温は低くなった。そして雲間から太陽が顔を覗かせることは少なかった。気温は12度と低め。そして時折冷たく強めの風が1コーナー方向から最終コーナーへ向けて吹いていた。12番手からスタートを切ったTGR TEAM au TOM’S36号車は、スタートで一気に2ポジションをアップ。しかし、すぐに順位を戻す展開となった。65周レースの序盤から苦しい展開を強いられた。原因ははっきりしないが、グリップ感が低く、ペースアップができず、その状況下で順位をキープすることが精一杯という厳しい周回が続いた。アクシデントによってフルコースイエロー(FCY)、セーフティーカー(SC)が導入され、2回目のSC後にピットイン、ドライバー交代。その後も状況は変わらないままマシンを運んでフィニッシュ。10位で1ポイントを獲得してレースを終えた。
●関口雄飛がスタートドライバーを担当した。
●決勝日の午前中に行われたウォームアップ走行でマシンセッティングが上手く行き、4番手のタイムを叩き出し、決勝に向けて順位アップできる期待が膨らんだ。
●2周のフォーメーションラップの後にスタートが切られ、好ダッシュ、1周目に2ポジションアップに成功した。
●タイヤのウォームアップを終えても確実なグリップが感じられず、順位を戻す展開となった。
●3台の車がペナルティを消化して、その分順位アップ。
●FCY、SCが導入され、24周してドライバー交代。
●ピットインの際に気温低下、路面温度の低下に対処してソフト目のタイヤを装着。
●坪井 翔のスティントでもグリップ不足の状況は変わらず、苦しい周回の末10位でフィニッシュ。1ポイント獲得、ランキング4位。
Driver | Race Result | 1s / Fastest Lap | 2s / Fastest Lap |
関口 雄飛 | P10 | 1’36.939 | ー |
坪井 翔 | ー | 1‘37.695 |
決勝:ドライバー・エンジニアコメント
関口 雄飛
36号車ドライバー
ウォームアップでの調子は良かったのに、決勝がスタートしたら感触が全然違って、全くペースが上がらず、タイヤの摩耗だけが進みそうでガンガン行けませんでした。スタートは良かったのですが、すぐにタイヤの調子が良くない状況になり、無理をして接触とかトラブルを引き起こしてもしようがないと判断し、ペースを守って周回するしかなかったですね。映像には映っていなかったと思いますが、序盤にNSXの17号車と争って軽く接触しています。ランキング争いをしている相手ですが、そこでアクシデントになってもダメなので、冷静に、そこは引きました。前に行かれたくはなかったですが、引くとこは引かなくては、2戦残していますから。完走すること、ポイントが大事ですから。その判断は正解でした。止まってしまったら元も子もないですからね。タイヤのグリップが低くて、ペースが上がらず、グリップダウンも 来てしまったというとても苦しい展開でした。坪井はソフトで出たのですが、状況は改善されなかった。我慢して完走でき、1ポイント取れて、いろいろなデータも取れたと思うので、それを活かして残り2戦で頑張ります。
坪井 翔
36号車ドライバー
走り出しからペースが上がらなくて、関口選手からグリップしないという報告を受けて、その後も全然ペースが上がらず苦しそうだったので、ボクのスティントではソフト目のタイヤで行こうという判断は、レースの序盤から決まっていました。でも、タイヤを変えても状況は改善されなくて、ソフトにしてもグリップは上がらず、逆にしっかり感が無くなってドライビングが難しくなってしまいました。摩耗も早く、何も良いところがなくて、ロングスティントでしたからとても辛い周回が続いて追われっぱなしのレースでした。特に残りの10周は、全然グリップしてくれなくて、本当に辛かったです。36号車は決勝に強く、順位を上げられることがこれまでの流れだったのですが、今回は<何で?>と思うほどいつもとは違う展開でした。ソフトなので温まりは悪くなかったと思うのですが、コースインしてピークグリップが来るのは遅かったし、そのピークもあまり良くなかったですね。ウエイトが軽いマシンにパスされるのは仕方がないですが、重いマシンにも抜かれてしまうほどペースは良くなかったです。最後は何としてもポイントは取ろうと頑張って、同じスープラの14号車は抑えることができました。
吉武 聡
レースエンジニア
ピットストップを行なったマシンが3台いましたので、それで一時は8位あたりまで順位アップできたのですが、その先がダメでした。はっきり言って最初のスティントも、セカンドスティントもチョイスしたタイヤが全く合わなかった。レース直前のウォームアップでは調子が良かったですし、雄飛もスタートこそ良かったのですが、その後すぐにグリップしなくなったと連絡して来て、どうしようもない状況になってしまった。最初はハード目、そしてピットイン後はソフト目というタイヤをセットしたのですが、ハード目はしっかりとしたグリップ感が無い。ソフト目は、ソフト目でグリップしてくれず、どうしようもない状況でした。コンディションの変化もありましたが、それを予測してタイヤチョイスを行って来たのですが、それが結果に繋がらなかった。ガレージに帰ってからこの点をしっかり調べて、精査して今後に活かすしかないですね。最小ポイントを獲得できたのは少しの救いではありますが、NSXの17号車、1号車に先行されて、ランキングは変わらないですが、ポイントの差が開いてしまいました。特に1号車との差が開いたのが痛いですね。
東條 力
チーフエンジニア
ウォームアップ走行の調子などを見ていたら、もっと上位でのフィニッシュが期待できると思っていましたが、ちょっとがっかりな結果でしたね。せっかく雄飛のスタートは良かったのに、ペースが上がらず、常に混戦の中で走っていることが多くて、落ち着いて見ていられなかったですね。決勝中もコンディションは変化し、当然のように路面温度も下がって来ますから、最初のスティントとセカンドスティントではタイヤを変えて、セカンドでは少し柔らかめを採用したわけですが、路面状況とタイヤとのマッチングが合うところ、合わないところがあったみたいで、ペースが上がったり下がったりと何度か変化がありました。坪井も最後まで頑張っていましたが、防戦一方で苦しい走りとなっていました。ポイント争いでは、NSXの1号車にさらに点差を離されてしまっていますが、残り2戦で連勝を目指して進むしかないですね。
伊藤 大輔
チーム監督
最低でもポイントゲットという目標は達成できましたが、土曜日の練習走行の決勝を見据えたロングラン、そして決勝日のウォームアップ走行では、チョイスしたタイヤとのマッチングが良く、とても感触が良かったので、、決勝での順位アップの期待はかなり大きかった。しかし、走り出してみたら、雄飛からフィーリングが悪いというが報告が入って、どうしたのだろうと混乱してしまいました。サクセスウエイトを積んでいるマシン達、同じブリヂストンタイヤのマシンは、同じようなレンジのタイヤチョイスをしていました。NSXの17号車はちょっと違っていたのかな。決勝の路面温度は予測よりも低かったというのは事実ですが、その状況下でウエイトの軽いマシンのマッチングの方が良かったように思えます。ウエイトとチョイスしたタイヤのマッチングは、軽いマシンにアドバンテージがあったのではないかと思います。坪井に代わって、ソフト目のタイヤでも同じようにグリップ感が低くて苦しい走りを強いてしまいました。ランキングは変わらずともポイント差が広がってしまって、チャンピオン争いの状況は厳しくなりました。残りを連勝するつもりで臨まなくてはなりません。
舘 信秀
総監督
終わってみれば、37号車のすぐ後ろ、10位。37号車は、ピットストップペナルティを受けて1度多くピットストップしているのにすぐ後ろでゴールするとは・・・。37号車にはSCが入るなどしてラッキーだった面もあるが、36号車の今回のレースは、なぜか良いところがほとんどなかった。アクシデントとかトラブルとかはなかったけれど、その中で最小限の目標、ポイントゲットは達成できた。二人のドライバーからのコメントを聞いていると、ウォームアップ走行の好調さは一体何だったのか。不思議でならない。ランキングを争っているNSXの1号車と17号車には、またしても先行されてしまった。1号車は13番手スタートから上位へ。6位まで上がってこられた。チームの力もあるが、山本尚貴選手のドライブは、敵ながら天晴れと言うしかない。彼は、素晴らしい、強くて速いドライバーであると認める。しかし、我々も残り2戦でただ手を拱いているわけではない。