SUPER GT 第8戦 レースレポート

開催
サーキット
富士スピードウェイ(4.563km)
日時 11月27日(土) 11月28日(日)
来場者 23,200人 35,300人
天候 晴れ・ドライ 晴れ・ドライ
気温 10-9℃ 13-11℃
路面温度 12-10℃ 22-18℃

予選:レース内容

2021年シーズンの締めくくり。最終戦を富士スピードウェイで迎えた。大差はあるがチャンピオン獲得の可能性を残して臨むTGR TEAM au TOM’S 36号車は、優勝することがチャンピオンを獲得する唯一の道。そのためにも今回の予選は、是が非でも上位、できればポールポジションを狙うのは当然のことだった。練習走行から順調な仕上がりを見せていた36号車は、Q1で5番手、そして、Q2で4番手のタイムを叩き出し、チームメイトの37号車と同じ2列目のスターティンググリッドから決勝のスタートを切ることとなった。トップと16ポイント差があるチャンピオンへの道のりは、優勝し、かつポイントリーダーのNSX1号車が8位以下の場合に実現する。第2戦で悔しい思いをしている分、今大会はリベンジ戦でもある。まずは優勝を目指し、今年最後のレースに挑む。

●Supraにとってホームコースの富士スピードウェイ。そして最終戦はノーウエイト。マシン本来のパフォーマンスを発揮することができるこのコースを得意としている36号車だが、第2戦ではトップを走行しながらアクシデントによりリタイヤしている。

●最終戦の走り出し、午前中の練習走行で36号車は同じGR Supraの14号車に続いて2番手のタイムをマークし、順調な滑り出しを見せていた。

●関口雄飛がQ1を担当して、5番手でQ2進出を果たした。

●坪井 翔がQ2を担当、従来のコースレコードタイム1’26.386を0.3秒以上更新して4番手のグリッドを確保した。

●練習走行中に決勝をシミュレートしたロングラップでは、圧倒的な安定感を見せ、かつ好タイムをマークしており、決勝に向け自信を持って臨む準備が整った。

DriverQ1Q2
関口 雄飛P5 1’26.491
坪井 翔P4 1’26.084

予選:ドライバー・エンジニアコメント

関口 雄飛

36号車ドライバー

予選までは順調に来ています。自信はありましたが、実際に予選を迎えると、我々よりも周りのマシンのコンディションの上がり幅が良くて、ポールポジションは獲れなかった。路面のコンディションがもっと良くなるかと思ったのですがあまり良くなくて、それが予想外でしたね。4番手ですが、決勝のロングラップは物凄く調子が良くて、決勝で早めに前に出られたら勝てるのではないかと思っています。チャンピオンの可能性はまだ残っていますが、まずは勝たないとだめなので、余計なことは考えず、とにかく勝つことに集中して決勝をスタートします。タイヤのチョイスですが、37号車以外のブリヂストンユーザーは皆ハードだと思うので、差はないと思っています。勝てると思ってスタートします。ポイントリーダーのNSXの1号車とは16ポイントも離れていますので、逆にあまり気にしていません。数ポイント差だったら意識するでしょうけど、今回は全く気にしていませんね。勝って、そして最後にどうなっているかを楽しみにしています。

坪井 翔

36号車ドライバー

富士はSupraとの相性が良く、ストレートの速さにはアドバンテージがあって、上位を占められると信じて今回に臨みました。僕らがポールポジションを獲得できれば、また一歩チャンピオンに近づくことができると思っていましたが、ポールは獲れず、NSXの1号車が2番手に来ているのは、思い描いていた状況とは程遠い現実となってしまった。4番手という結果は悪くはありませんが、内容を考えるとあまりよろしく無い。同じSupraの14号車がポールを獲りましたが、あのタイムは速いですね。僕らのセクターベストを足したとしてもあのタイムが出せるかどうかはわかりません。今シーズン、予選の一発の速さを示すことができず、ここまできました。最終戦でもそれを解決することができなかった。予選の順位に顕著に出ているのかなと思います。たぶん14号車とは同じタイヤでアタックしているので、それでもコンマ3秒の差をつけられたのは大きい。しかし、決勝のセットアップ、ロングランはものすごく速いので、自信は持っています。第2戦でも4番手からトップを走って勝てなかった。今回は最後まで走って自身初のGT500クラス優勝を果たしたいと思います。

吉武 聡

レースエンジニア

やっと重り(サクセスウエイト)を降ろすことができました。そしてホームコースの富士に来ればSupraは速いです。SupraのライバルはSupraになると思っていたのですが、NSXの1号車が2番手に来たのは、ちょっとびっくりしています。午前中の練習走行では後ろの方にいたので、悩んでいるのかなという感じで見ていたので、さすがポイントリーダーですね。そして、ポールポジションを獲得した同じSupraの14号車はかなり速いですね。アタックのタイミングで、とてもうまくタイムを出せたのだと思っています。一発の速さは本当に速いですね。しかし、練習走行中のロングラップでは、ウチがめちゃくちゃ速かったので、予選ではポールを獲れませんでしたが、決勝ではかなり自信があります。ドライバーの雄飛も坪井もロンングラップはすごく速かったので、決勝はスタートからフルプッシュして優勝します。優勝しなくては、チャンピオンの可能性はないですから、まずは優勝。そして、相手がどのポジションでフィニッシュするか。特に1号車が何位でゴールするかで決まりますね。

東條 力

チーフエンジニア

今回36号車と37号車はチョイスしたタイヤのコンパウンドが異なっています。36号車は、 他のブリヂストンタイヤ装着のSupraが選んだものと同じ堅めのタイヤです。今日の路面温度でも十分にパフォーマンスを発揮してくれています。予選の一発を狙うというよりも、練習走行のロングラップ、決勝を見据えた走行では素晴らしく速かった。予選結果は4番手ですが、十分に勝つチャンスはあると思っています。しかし、NSXの1号車も8号車もQ1を突破して上位グリッドにつけているので油断はできませんね。やはり富士に帰ってきて、ノーウエイトとなればSupraは他のサーキットよりはセットアップをまとめやすいし、速さがあります。しかし、レースがスタートすると何が起こるかわからない。アクシデントが起こって、それがプラスになることもあれば、マイナスになることもある。作戦としては、やはりピットインはできるだけ早めにする。レースの3分の1を消化したミニマムラップで入れるか・・・。まあ、その辺りで入れるのが順当でしょうね。チャンピオン争いはうちの場合、勝っても他のマシンの順位次第ですが、面白い展開のレースを期待してください。

伊藤 大輔

チーム監督

当然ポールポジションは狙っていたので、4番手、2列目からのスタートというのは悪くはないですが、ちょっと悔しいですね。予選までは良い流れで来ていますし、特にロングラップは良かったので、それを明日の決勝のコンディションにうまく合わせ込んで、スタートドライバーに頑張ってもらって、マネージメントレベルではうまく戦略を立てて、それを遂行すれば勝てるであろうと・・・。アクシデントに巻き込まれることなく、最後まで頑張れば、なんとかなるかなと。Supraの良いところはここ富士で発揮できるので、有利な面はありますが、練習走行で手こずっていたように見えたNSXの1号車が2番手に居る。選んだタイヤはたぶん同じようなものでしょうから、レース展開としては面白くなるのではないかと思っています。1号車があそこにいると、気持ち的にはSupra有利というよりも、逆にプレッシャーを与えられているような気分になってしまいますが、自分たちはミスなく走り切れば勝てると思っているので、あとは相手次第でチャンピオンを取れるかどうかです。優勝しなくては、話は始まらないですからね。優勝にフォーカスを置いて頑張りますよ。

舘 信秀

総監督

ホームコースである富士に戻ってきて、最終戦はノーウエイト。GR Supraにとってはここで速さを示さなければならない。36号車は走り出しから好調。トップタイムを叩き出すことはできなかったものの、ガレージから持ち込んだセットアップの方向性は良く、特にロングラップ、決勝のセットアップは良い感触を得たと報告を受けた。第2戦、5月のここ富士ではトップを走行していながらプロペラシャフトが破損するというアクシデントで涙を飲んだ。今回こそは勝って、今シーズンを締めくくれれば最高だ。チャンピオン争いに関しては、ポイントリーダーのNSX1号車と16ポイント離れているので、優勝しても1号車が8位以下でなければチャンピオンを獲得することはできない。その1号車が二つ前のグリッドに位置している。練習走行で調子が悪そうだったのに、予選ではこの位置にきているという、その底力をまたしても感じさせられた。36号車としては、チャンピオンのことは置いておいて、1勝、第2戦の借りを返すというつもりで決勝に臨みたい。

決勝:レース内容

吹く風は冷たさを感じさせたが、空は雲ひとつない快晴。多くのモータースポーツファンがグランドスタンド、コース脇の観戦エリアに詰めかけていた中で決勝がスタートした。スタート直後から積極的な展開で2位に順位アップ。3周目に最終コーナーでマルチクラッシュが起こり、序盤から波乱の展開。そして7周目にコースサイドにストップしてしまったGT300クラスの車両撤去のためにセーフティーカーが導入された。セーフティーカーランが終わり、リスタートで一気にダッシュしトップへ。早めのピットストップ。ドライバー交代を行い、トップを堅持しながら周回を重ねた。レースも終盤に差しかかった51周目に、4番手を走行していたポイントリーダーのNSX1号車が、接触を受けてダメージを負いピットへ。チャンピオン争いの流れが大きく変わった。その後も快調に周回を重ねた36号車がトップでフィニッシュラインを切り、チャンピオンも獲得するという最高のシーズンエンドとなった。

●関口がスターティングドライバーを担当した。

●素晴らしいスタートで1周目に一気に2ポジションアップ。トップ、ポールポジションスタートのSupra14号車を追った。

●序盤のペースは14号車が上回り4秒のリードを奪われた。7周目にGT300クラスのマシンがコースサイドにストップして、セーフティーカーが導入され、トップとのギャップは無くなった。

●セーフティーカーランを終えて13周目にリスタート。ここでまたしても関口がダッシュ一発、トップに立った。

●25周してピットイン。坪井に交代。

●坪井はトップをキープしてレースに復帰。背後にはチームメイトの37号車が2位につけてTEAM TOM’Sの1-2体制となっていた。

●坪井は安定したペースで約4秒の差を保ってトップでフィニッシュラインを切って優勝。そして、チャンピオンを獲得。ドライバー/チームのダブルタイトルを獲得した。

Driver Race Result 1s / Fastest Lap 2s / Fastest Lap
関口 雄飛 P1 1’28.551
坪井 翔 1‘29.240

決勝:ドライバー・エンジニアコメント

関口 雄飛

36号車ドライバー

スタート前は、自分たちにとって(チャンピオンの)可能性はあるけど、厳しい条件だったので、今年まだできていなかった優勝を目指していました。今シーズンは本当にミスもなく素晴らしいシーズンでした。自分はこれまでに、何度かポカをすることがありましたが、今年はノーミス、それも高いレベルでここまで来れていました。でも優勝できていなかった。今回は、マシンもタイヤも最高だったので、最後の最後で優勝ができ、チャンピオンもついてきて、本当に嬉しいです。1周目から積極的に行ってやろうと考えていました。1コーナーで2番手に上がれたし、セーフティーカー明けのリスタートが決まってトップに立つことができた。ここまで多くの方に応援していただき、チャンピオンまで上り詰めることができた。一番はチームのスタッフが支えてくれたことが大きいです。これまで何度かチャンピオンに近づくことがありましたが、今回のように大差がある中でチャンピオンになれたことに、まだ実感が無いですね。時間が経つと実感が湧いてくるのでしょうか。でも、これで終わりでは無いと思っています。2連覇、3連覇できるように頑張ります。皆さん応援ありがとうございました。

坪井 翔

36号車ドライバー

僕にとって今回がGT500クラスで初優勝となります。第2戦の富士では初優勝に手が届きそうだったのに、マシントラブルによって目前で逃してしまい、とても悔しい思いをしました。今回は関口選手がトップでバトンを繋いでくれたので「絶対にこの位置を守り切るんだ」という強い思いでピットアウトして行きました。途中同じSupraの37号車に迫られましたが、タイヤのマネージメントをしながら、プッシュできるところはプッシュして、ポジションを守り切って優勝することができました。勝つことだけに集中していたので、勝ってチャンピオンだということについては何かまだフワフワした気分です。フィニッシュしてパルクフェルメで山本尚貴選手が「おめでとう」と言ってくれました。アクシデントでチャンピオンになれなかったのに、素晴らしいスポーツマンシップを持っているドライバーだと感じました。富士ではSupraが速い、強いのは分かっていたのですが、自分たちでそれを証明することができました。そして37号車が2位でフィニッシュしてチームにとっては最高の結果で最終戦を終えることができて嬉しいです。 最後の最後で笑ってシーズンを終えることができて本当に嬉しいです。

吉武 聡

レースエンジニア

嬉しいですね。でも勝てるとは思っていました。自信はありました。とりあえず、優勝することだけを考えてスタートしたのですが、もっと凄いチャンピオンまでついてきてくれましたね。前回の富士、第2戦の段階から速いのは分かっていました、そしてウエイトがなければ絶対に速いのはチームもドライバー二人も分かっていました。タイヤチョイスもバッチリでした。チョイスで重要視したのはスタートからゴールまで66周をフルプッシュできるタイヤ。それが決勝日のコンディションにもマッチしました。ファーストスティントもセカンドも同じハード系のタイヤでいきました。そして、セーフティーカーが入った後のリスタートのことも考慮して、多少タイヤエアー圧を高めにセットしていたので、それがリスタートで雄飛が一気にダッシュできたことにつながったのだと考えています。逆にセーフティーカー、FCY(フルコースイエロー)が全くなかったら、そのまま14号車に逃げられていたかも知れないので、ラッキーな面もありました。終わってみれば、37号車も2位でフィニッシュできて最高の結果で終えられました。

東條 力

チーフエンジニア

昨日の練習走行から今日の決勝ロングラップの速さは分かっていました。しかし、勝てるかどうかはスタートしてみなければわからなかった。ドライバー二人は素晴らしい走りでトップに立ってくれた。特にファーストスティントの雄飛の気持ちがトップをもぎ取った。リスタートの作戦も最高だった。36号車としては思い通りの展開に持ち込むことができて、坪井もタイヤのマネージメントをしつつ、良いペースでフィニッシュまで突き進んでくれた。レースの途中でこれなら勝てると思いました。しかし、チャンピオンになれるかどうかは相手がいるものですから全くわからなかった。そしてNSXの1号車に降りかかったアクシデントで一気に流れが変わり、36号車に優勝とチャンピオン獲得がもたらされた。16ポイント差があったのでこのような展開は誰も思っていなかったと思います。私もチャンピオンまでは・・・と思っていなかった。でも、今日の36号車には余裕すら感じる強さがありました。37号車もとても速かったですよ。36号車に何かのミスがあれば37号車が勝っていました。それだけチームのパフォーマンスが高かったということですね。

伊藤 大輔

チーム監督

とにかく嬉しいです。レース前は、この最終戦に勝つことだけを考えてレースに臨みました。
決勝レースが始まると、スタート直後に雄飛がアグレッシブな走りで見事なオーバーテイクを見せ、素晴らしく力強い走りで後半に繋ぐと、これを受けた坪井がクレバーな走りで、あきらめることなく最後まで走り切ってくれました。期待以上の内容で優勝を勝ち獲り、その結果、レース前には無理だと思われていたチャンピオンも獲得することができました。
今年は2戦目に途中で止まってしまったこと以外はミスのないレースを続けることができました。ただ優勝からは遠ざかってしまい、チャンピオンのチャンスも遠のいていました。でも最後のレースで優勝することができました。レースの度に課題も出てきましたがトヨタ、TOYOTA GAZOO RacingやTCD(GR Supra GT500の開発・製作をしたトヨタ・カスタマイジング・デベロップメント)など多くの関係者に支えられて解決することができました。来年もまた、こんな素晴らしいSUPER GTレースを戦いたいと思っています。自分がTEAM TOM’Sで現役時代に成しえなかったことを達成できて嬉しいです。

舘 信秀

総監督

昨シーズンの最終戦、37号車がフィニッシュ目前で失速したことの逆のようなドラマが展開された。本当にレースは終わるまでわからない。序盤で雄飛がセーフティーカーランからのリスタートでトップに立ってくれた。翔のペースもとても良かったので、勝てると確信していた。しかし、NSXの1号車は4位を走行していたので、チャンピオンの可能性はほとんどないなと観念していた。そして、1号車を襲ったアクシデントで一気に我々にチャンピオン獲得のチャンスが舞い込んだ。嬉しい、もちろんとても嬉しい。けれど、1号車が味わったショックと悔しさを知っているだけに大きな声で嬉しさを爆発させることはできなかった。最終戦でチャンピオンの可能性があって、その少ない可能性に望みをかけて多くのスポンサーさん、ゲストさんが足を運んでくれていたので、皆さんに大きな喜びを贈ることができたのは良かった。そしてずっと36号車を応援してくれているサポーターの皆さん、ファンの皆さんと一緒にシーズンエンドで最高の結果で喜びを噛み締めることができた。最後に今シーズン応援をしていただいた全ての方々にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

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