SUPER GT 第6戦 レースレポート

開催
サーキット
オートポリス(4.674km)
日時 10月23日(土) 10月24日(日)
来場者 6,500人 10,300人
天候 晴れ時々曇り・ドライ 曇り・ドライ
気温 14-14℃ 12-12℃
路面温度 26-25℃ 20-18℃

予選:レース内容

2年ぶりの九州、オートポリス。このレースからレギュラードライバーのサッシャ・フェネストラズが復帰した。彼は約10ヶ月ぶりに来日、SUPER GTの現場に姿を現した。昨年は、コロナ禍で開催されなかった九州ラウンド。スープラにとっては、初のオートポリスとなった。全8戦で戦われる2021年シリーズは終盤戦に突入している。この第6戦は、サクセスウエイトが最も重い一戦。その状況下でもポイントを獲得して次戦に繋げることが重要となってくる。TGR TEAM KeePerTOM’S 37号車は、ランキング8位、獲得ポイント28点。サクセスウエイトは56kg。トップ8番手までがQ2に進出できるQ1を8番手で通過。Q2では6番手タイムを記録して3列目のグリッドから65周の決勝をスタートすることとなった。決勝は事前のエンジン交換によってピットストップ5秒のペナルティを消化する。

●サクセスウエイト58kg(実ウエイト39kg+燃料リストリクター1段階)。

●平川 亮がQ1を担当した。毎戦僅差のタイムアタックとなる予選で、平川は8番手のタイムを記録してQ2進出を果たした。

●今シーズン初めて予選に臨むフェネストラズがQ2を担当した。

●フェネストラズは、午前中の練習走行(9:15〜11:20)でマシンの感触を掴みタイムアタックに臨んだ。

●タイヤのウォームアップを終えて、アタックをかけた結果は6番手。スープラ勢の中で2番手。大量ポイントを獲得するために目標としていた上位グリッドに位置することができた。

●第5戦終了後にエンジンの不具合が発見されてエンジン交換を行なった。決勝ではピットストップのペナルティを受けることとなっている。

DriverQ1Q2
平川 亮P8 1’32.699
サッシャ フェネストラズP6 1’32.728

予選:ドライバー・エンジニアコメント

平川 亮

37号車ドライバー

朝(練習走行)の走り出しですぐにトップタイムを出せたので、好調だなという気持ちでした。そして、サッシャの復帰戦ですから、できるだけ多く彼に乗ってもらって感覚を戻してもらう努力もしました。タイヤチョイスでは特に悩むところもなく、事前に決めていたタイヤで行けるかなと。問題もなくてロングランも良かったです。練習走行での感覚では、予選で5番手くらいには行けると思っていました。練習走行から少し変えたセッティングが裏目に出てしまって、アタックに入ったら感触が悪くて、もしかしたらQ1で落ちてしまうかなと思っていましたが、ラッキーな部分もあって何とか通過できてホッとしました。周りは、ランキングを争っている14号車、17号車との予選結果、グリッドの位置関係に気を使っていたようですが、ボク自身は、それよりもQ1の突破、タイヤの温め方、Q2に向けてのセッティングの変更の方が気になって、ライバルに気を遣うまでには至らなかったですね。自分は、タイヤを温めすぎて、アタックに入った時にはタイヤのグリップピークを外してしまっていたので、その点についてサッシャへアドバイスをしました。

サッシャ フェネストラズ

37号車ドライバー

SUPER GTの現場に戻ってくることができて最高の気分です。10ヶ月ぶりにGTマシンをドライブすることができてハッピーです。練習走行では簡単ではなかった。このマシンのスピード感と、ものすごいダウンフォースに対して自分の感覚を戻し、合わせることが必要だった。そして、すでにサクセスウエイトが積まれているから、それにアジャストする必要があったが、何とか合わせ込むことができたかな。そして亮がQ1を突破してくれた。素晴らしい走りだった。そして、Q2が自分のパートだった。練習走行ではユーズドタイヤしか履いていなかったので、ニュータイヤでアタックするということは簡単ではなかった、ユーズドとニューではコンマ8秒から9秒くらいタイム差がある。ウォームアップを終えて、アタックに入って、セクター1では慎重に行きすぎた。限界まで攻められていなかった。セクター2でタイヤのグリップがアップしたので、ペースアップ。セクター3はもっとプッシュできた。そしてもう1周アタックしたのだけれど、その時にはもうタイヤのピークは越えてしまっていた。もっと上手くアタックできていたら4番手には行けたかなと悔やんでいる。

⼩枝 正樹

レースエンジニア

サッシャはブランクがあるので、エンジン特性とタイヤのグリップ感覚をどれだけ取り戻せたか、限られた時間の中で大変だったと思います。練習走行でフルに彼に乗ってもらっていた訳ではないですからね。アジャストしきれない中でもとても頑張ってくれたと思います。練習走行中のロングランでもコメントはしっかりしていたし、彼のパフォーマンスに問題は一切なかったのは確かです。久しぶりのドライブ、2年ぶりのオートポリスで、走り出しではマシンのバランスに少し戸惑っていた部分はあります。Q2アタックのセクター1は抑え気味だったのか。しかし、セクター3はその時点での全体ベストタイムを叩き出していたので、さすがだなと思っていました。事前にシュミレーターも行ったし、特に2年ぶりのオートポリス、初めてのスープラということでも問題はなかったと思います。アタック前に実車での走行時間がもっとあれば、もっと上位のタイムを出せていました。オートポリスは、他のサーキットと比較して、タイヤのピックアップが多いので、それがどう影響するか。テストは行えていないので、チョイスしたタイヤが絶対にOKという確信はありません。それはライバルも同じですね。

東條 力

チーフエンジニア

亮が頑張ってくれましたよね。Q1の突破は微妙でしたが何とかQ2に進むことができました。そして復帰して来たサッシャがQ2で順位を上げてくれました。いきなりのアタックで、こちらもかなり頑張ったと思います。しかし、前戦の菅生の後にマシンをチェックしたところ、エンジンの吸気系に不具合が見つかったので、エンジン交換をしています。菅生でスープラの14号車がストップしてリタイヤしていますが、それも同じようなトラブルであると聞いています。37号車は、問題が軽度でリタイヤしなくて済んでいます。エンジン交換によって決勝ではピットストップペナルティをレース中に消化しなくてはなりません。スープラ3台がエンジン交換していて、ランキング順に呼ばれることになっています。37号車は、2番目に呼ばれます。それは何周目なのかは、我々にはわかりません。その時のレースの状況でその後の展開が変わって来ますね。ペナルティの消化直後にセーフティーカーが導入されたら、順位は下がってしまいますが、トップとのギャップを最小限に留めることができますから、順位挽回のチャンスが出て来ます。

山田 淳

チーム監督

サッシャにとってはリハビリ戦ですかね。ポッと乗っても、問題なく走行してくれているので安心しています。さすがですね。10ヶ月くらいこのマシンに乗っていなかったのですがその感覚を合わせるのは大変だったと思います。前週にSuper Formulaで走行しているので、それが良かったかなと思います。亮がまずQ1を突破してくれました。8番手とギリギリだったのですが、サクセスウエイトを考えれば上出来です。そしてサッシャが復帰後にいきなり、それも今回初のニュータイヤでアタック。セクター1ではミスというか、攻め切れていなかったと言っていますが、その後はペースアップしてくれた。6番手は上出来です。彼自身は、結果を悔やんでいましたけれど、素晴らしいパフォーマンスでした。決勝はスタート後にエンジン交換のペナルティでピットストップを行います。レースコントロールから指示が出て、ピットロードエンドで5秒間停車、再びコースインします。どんな状況下で、どの位置で復帰できるかで結果が変わる可能性があります。目標は、無事にフィニッシュラインを切って、大量得点獲得です。

舘 信秀

総監督

やっとサッシャが復帰することができた。日本自動車連盟(JAF)、モータースポーツ界をはじめ、管轄官庁や国会議員の皆さんの力添えで彼は日本への再入国を果たすことができて、こうやってスープラのステアリングを再び握ることができた。この場をお借りしてお礼を申し上げたい。2年ぶりのオートポリス。九州のモータースポーツファンの皆さんにもお会いすることができた。コロナ禍は、モータースポーツ界にも大きな影響を及ぼした。さて、サクセスウエイトの影響があって、この第6戦では軽いマシンたちが予選の上位を占めたわけだが、その中で6番手という好位置を得られたと評価している。亮もサッシャも素晴らしい仕事をしてくれた。もちろんチーム全体のパフォーマンスが良かった結果だ。しかし、我々より重い14号車が2番手に位置した。同じスープラである。その差が気になる。それを見ると我々は、もっと上のポジションを得られたということか・・・。3列目のグリッドは悪くない。ここからできるだけ多くのポイントを獲得するべく決勝に臨む。

決勝:レース内容

九州の阿蘇は、秋の冷たい風が吹いていた。時折1コーナーから最終コーナーへ向けて強めの風が通過した。天気予報よりも気温は上がらず、曇り空の下で65周の決勝レースがスタートを切った。1周目にひとつポジションを落として7位へ。6周を終了してペナルティストップのサインが出されたため、7周を終えてピットイン。ピットロードエンドのペナルティエリアで5秒のカウントダウンの後にレースに復帰した。その後フルコースイエロー(FCY)、セーフティーカー(SC)が導入されたことで、ペナルティによって順位を下げたが、トップからのギャップは最小限に抑えられた。レースの序盤で2回のセーフティーカーが導入され、2回目のセーフティーカーランが明けた周回で大多数のマシンがピットイン。37号車も24周してドライバー交代。終盤に追い上げて9位フィニッシュ。2ポイントを獲得した。

●サッシャ・フェネストラズがスタートドライバーを担当した。

●1周目に8番手スタートの同じスープラ39号車にパスされて一つポジションを下げてしまった。

●6周終了。メインコントロールポストでピットストップのボードが出されて、7周を終了してピットイン、5秒のペナルティストップを終えてレースに復帰、GT500クラスの最後尾につけた。

●序盤で複数のアクシデントが発生。FCY、その直後にはSCが導入された。2回目のSC明けにピットイン、ドライバー交代。

●平川 亮がコースインした時点では、クラス最後尾。

●タイヤのピックアップに苦しめられて、ペースアップできず。苦しい展開ながら、終盤に向けてタイヤを最大限ケアしつつ周回。

●上位のマシンがタイヤのグリップダウンで順位を落とす中、着実にポジションアップ。リタイヤするマシンも出て来てポイント獲得圏内まで順位を上げた。

●結果は9位フィニッシュ。2ポイントを獲得して、ランキング10位となっている。

Driver Race
Result
1s / Fastest Lap 2s / Fastest Lap
平川 亮 P9 1’37.476
サッシャ フェネストラズ 1’35.783

決勝:ドライバー・エンジニアコメント

平川 亮

37号車ドライバー

サッシャの前半は、タイヤのピックアップが酷くて、同じタイヤで後半を走行したら同じように苦しめられると判断して、自分のスティントではソフト目に代えて臨みました。ピックアップは多少抑えられましたが、摩耗が進みやすくなってしまって、40周以上のロングスティントでは、タイヤをセーブして走らなくてはいけないと判断して、ペースを上げずに走っていました。マシンのセッティングは、ハード目のタイヤに合っていたと思いますが、ピットイン後もハードで出ていたら、ピックアップの影響でペースを上げることができなかった可能性は高かった。ソフト目のタイヤで行ったのは正しいと思うのですが、マシンのセッティングとはあまりマッチしていなくて、摩耗が一気に進むような感じでした。終盤4台くらいが一気にペースダウンした時に、タイヤをセーブしていたおかげで順位アップすることができました。その中に36号車もいて、その前でゴールすることができました。可能性はゼロではないですがチャンピオンシップの争いはかなり厳しいですね。残り二戦は勝つつもりで行くしかないですね。

サッシャ フェネストラズ

37号車ドライバー

日本に戻ってこられて、GTカーをドライブすることができてハッピーだったことは確かだ。でも、とても難しいレースだった。スタートも思っていたよりも良くなくて、ポジションを下げてしまった。無理して接触することは絶対にしたくなかった。その後は、ピットストップペナルティ、アクシデントの多発といろいろなことが目まぐるしく起こって、久しぶりのレースは本当に大変だった。タイヤは、すぐにピックアップを起こしてグリップダウンしてしまうし、ペースを上げようとしてもできなかった。そんな状況の中でもトラブルに巻き込まれることなく、自分のスティントをちゃんと走り切ることができて良かった。24周してドライバー交代したけど、セーフティーカーラップが多かったのでレースしたという感じはあまりしなかった。スタートは、ハード目のタイヤ。路面温度が予選の時より低かったのでウォームアップも難しく、ペナルティストップと2回のセーフティーカーランの後のリスタートでも、一度温まったタイヤが冷えてしまっていたので難しかった。亮のタイヤマネージメントが最高にうまくて、最後まで温存して順位アップしてくれたのは最高だった。残り2レースでもっと良い結果を残せるように頑張ります。

⼩枝 正樹

レースエンジニア

9位でフィニッシュはできましたが、もう少し上でフィニッシュしたかったですね。ピットストップペナルティもあり、それでもセーフティーカーが入って、順位を下げただけで最後尾につけることができ、順位の挽回をと思っていたのですが、最初のスティントからタイヤのグリップダウンが早そうだったので、ペースを上げることもできず、度重なるアクシデントで10周以上レースできませんでしたから、サッシャは24周してピットインしていますが、実際には13周くらいしかレースできませんでしたね。ピックアップの影響でマシンのバランスが悪くなってしまって、36号車と同じタイミングでピットイン、ドライバー交代をしたのは、タイヤが苦しそうだし、引っ張ってもマージンを築くのは無理そうだしと判断した結果ですね。気温も低くなり、ソフト目のタイヤに早く替えた方が良いと思ったのですが、こちらのタイヤもあまりよろしくなくて、コースインしてから一向にペースも上がらず、一気に摩耗も進みそうで、ピックアップもあって、苦しい展開でした。亮は40周以上のロングスティントになりましたが、かなりタイヤを労って走ってくれたおかげで、最後に順位を上げられる余力があったという結果です。

東條 力

チーフエンジニア

ペナルティのピットストップの後にセーフティーカーが入ってくれたので、順位を下げただけで決定的な差にはならずに済んだのは良かったですね。しかし、ペースが上がらずに苦しい展開に入り込んでしまいました。アクシデントや、タイヤのグリップの低下で上位を走っていたマシンが後退して、順位を上げることができましたが、それだけというか、自ら順位を上げていくという展開には持っていけなかったですね。ドライバー達もそれを判断して耐えて耐えて、タイヤのコンディションを悪くしないようにしながら自分のスティントを担当してくれたと思います。亮は、最後の残り10周くらいまで我慢に我慢を続けてからペースアップして順位を上げることができた。それでも9位ですからね。本当に苦しいレースでした。計算上はまだチャンピオンへチャレンジすることができます。その可能性を信じて、残りの2戦へ向かいます。

山田 淳

チーム監督

何とか9位でフィニッシュできましたが、最終盤に順位を上げることができたのは、周りのマシンのタイヤのグリップの低下によって、ペースダウンしたことでうちが順位を上げられたということですね。サッシャも亮も頑張って耐えてくれた結果で得られた9位ですね。最初のスティントでペナルティストップを消化して、その後にFCYやSCが入って、それはうちにとってはプラス方向に働いてくれたのですが、作戦面、戦力面ではポジションアップにつながるものを見出せなかった。サッシャにはもっと良いレースをさせてあげたかったと反省しています。亮に対しても良しと思ってセットしたソフト目のタイヤの効果がなく、苦しい厳しいレースを強いてしまいましたね。ピットインのタイミングは、あそこで入れるべきと判断しました。引っ張ってもまた何かアクシデントが起きてしまったら問題ですから、36号車と同じタイミングで入れました。ピット作業は、ジャッキアップ、左リヤタイヤを外すのに若干時間がかかったということもあり、遅れをとってしまいました。苦しい中で2ポイント獲得できました。サッシャも戻って来たので、残り2戦でミラクルを起こすつもりで戦います。

舘 信秀

総監督

スタート前からピットストップペナルティを受けるのは分かっていたので、ペナルティを消化した後はどのように展開するかが気になっていたが、レースに復帰して数周してSCが導入されて、クラスの最後尾につくことができたのは我々にとってはプラスとなった。しかし、サッシャも亮も思うようにペースが上げられずに苦しいレース展開となってしまったようだ。その状況下でも我慢して周回を重ねて9位でフィニッシュしてくれたことは評価したい。今シーズン初のGTレースとなったサッシャは、接戦の中でも接触することなく、無傷で亮にバトンタッチしてくれた。その点は若いのに安心して見ていられる。10ヶ月のブランクを全く感じさせなかった。決勝日のウォームアップ走行では特に心配はなかったのに、決勝レースが始まってみたら、状況は大きく変化して、ペースは上がらないし、タイヤのピックアップに苦しめられて、順位を思うように上げられなかった。数時間で状況が大きく変わる、それはなぜなのか、本当にレースは難しい。それでも2ポイント獲得できたことは良しとしたい。

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