SUPER FORMULA 第1戦 レースレポート

開催
サーキット
富士スピードウェイ レーシングコース(4.563km)
日時 4月3日(土) 4月4日(日)
来場者 7,800人 11,300人
天候 晴れ時々曇り・ドライ 曇り時々雨・
ドライ-ハーフウエット
気温 20-20℃ 17-17℃
路面温度 27-24℃ 19-19℃

予選:レース内容

世界的なコロナ禍の状況下で迎えることとなった2シーズン目。カレンダー通りに2021シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権の開幕戦を富士スピードウエイで迎えることができた。国内トップフォーミュラシリーズの開幕戦が富士から始まるのは2009年以来。この時期としては、暖かなコンディションの予選。今シーズンのドライバーラインアップは、36号車に11シーズン目、シリーズ最年長となった日本を代表するドライバー中嶋一貴。そして37号車に昨年のスーパーフォーミュラ・ライツチャンピオンの宮田莉朋がステップアップを果たしてステアリングを握る。オフシーズンには、鈴鹿サーキット、その後初戦と同じ富士スピードウエイで合同テストを消化してシーズンイン。昨年スポット参戦し、今シーズンフル参戦となる宮田は、Q3まで進出し6番手。中嶋は、Q2で敗退、13番手から41周の決勝レースをスタートすることとなった。

●Q1は9台づつのA、Bグループに分かれてタイムアタックが行われた。
●宮田莉朋がAグループ。中嶋一貴がBグループでQ1を走行した。
●中嶋、宮田共にグループの3番手でQ2に進出。Q2は、14台1グループで行われ、上位8台がQ3に進出する。
●宮田は、5番手のタイムを記録してQ3進出。
●中嶋は、セッションの最後に8番手タイムをマークしてQ3進出を果たしたかに見えたが、8番手タイム、1分22秒143をマークした周に第3セクターでコースからはみ出てしまい、4輪ともにコースリミットを逸脱したと判定されタイムが抹消されてしまった。Q2のセカンドタイムによって13番手となりQ3進出はならなかった。
●宮田は、Q3でQ2と同じく1分21秒台に突入。トヨタエンジン勢では2番手となったが、結果として6番手のグリッドから決勝をスタートすることとなった。

DriverCar No.Q1Q2Q3
中嶋 一貴36B-P3 1’22.333P13 1’27.230
宮田 莉朋37A-P3 1’22.298P5 1’21.975P6 1’21.793

予選:ドライバー・エンジニアコメント

中嶋 一貴

36号車ドライバー

シーズンインまでのテストは初戦と同じ富士だけだったのですが、そのテストの感触は良かったですね。予選前の練習走行でも走り出しは良かったと思うのですが、気温の変化、路面温度の変化でコンディションが変わってセッティングが上手く機能してくれなくなってしまいました。そして、予選のQ1では、練習走行の最後の状況よりは、自分の居場所は良かった。この分だとQ3に進出できるかなという感触でした。しかし、Q2のアタックラップでスープラコーナー(最終コーナー手前)の出口ではみ出してしまい、走路外走行とジャッジされてタイムは抹消。決して無理したわけではなくて、予想していたラインよりもアウト側に出て行ってしまった。Q3には進出できるマシン状態だったのでもったいなかったです。路面温度の変化でコンディションが変わるので、フィーリングが変わってくる。それに合わせるのが大変でしたね。その中でタイムを出すのが自分たちの仕事なのですが・・・。しかし、Q3に行けたとしても、ポールポジションを争える状況ではなかったですね。決勝は、ウエットコンディションの予想ですから、その中で順位を上げるのみです。

宮田 莉朋

37号車ドライバー

練習走行は良かったのですが、いざ予選になったら天候の変化でコースコンディションが変わって、セットアップもドライビングも合わせきることができず難しい予選でした。特にタイヤのウォームアップが難しかったです。データで見るタイヤの温まりと自分の感覚にズレがあった。また風向きによってエアロセッティングをどうすれば良いのかがとても難しかったです。ホンダ勢のストレートスピードに負けないようにダウンフォースを削ってしまうと、ダウンフォースが重要な第2セクターでバランスが悪くなってしまうことがある。Q3の結果は、そのバランスが悪くなってしまい、タイムが伸びなかったかなと思います。当然トップを取るためにセッティングを変えているのですが、それが裏目に出てトップも取れなかったし、トヨタエンジン勢の中でも2番手になってしまいました。トップを狙って取れなかったのはとても悔しいですね。第3セクターは速かったのでそれはエンジニアさんメカニックさんの努力の結果だと思うので感謝しています。あとは、天候の変化に対応できなかった自分の責任ですね。決勝は、雨だろうが晴れだろうが着実に走ってポイントゲット、できれば優勝を狙いたいです。

大立 健太

36号車エンジニア

直前の富士テストの最後の状態で持ち込んでいるので、走り出しのフィーリングは良かったですね。テストの二日目午後のセットアップが良くて、それを今回持ち込んでいます。しかし、コンディションが変化する中で対処してQ1のタイムも良く、この調子でQ3までと思っていた矢先にQ2でトラックリミットをオーバーしてしまってベストタイムが抹消されてしまいました。ウチのマシンはあまり路面温度が高いとタイムが出ないのですが、Q2の状況は路面温度が26度から28度くらいだったので、コンディションが良かっただけに、惜しいタイム抹消でした。Q3に残れていれば、セットアップで良くする要素もあったので、ホンダエンジン勢のトップ4に届かないまでもかなり戦えたのではないかなと思っています。決勝が雨だったら、一貴さんは速いので、順位をアップする可能性は大きいです。しっかりサポートできるようにセッティングのアジャストミスをしないようにしなくてはなりません。

小枝 正樹

37号車エンジニア

開幕戦前のテストからの流れの中で、確認すべきことがいくつかあって、予選前の練習走行でそれを確認して予選に臨み、特に問題ない状況だったと判断しています。Q1、Q2、Q3と予定通りというか、順調にコマを進めることができていたと思います。しかし、タイム的には、ホンダエンジン勢が良かったですね。それ以外では、タイヤのウォームアップで多少苦労している部分があって、Q3でもテストでやってきた事、状況と違っていて思うような結果にならなかったですね。やはり、イベントの中では、スーパーフォーミュラが走行する前に他のカテゴリー、種類のマシンが走ることもありコースコンディションは違ってきます。路面温度、風向き、風の強さでドライバーの感じ方も異なってきます。決勝はウエットコンディションという予想がありますが、テスト、練習走行で確認できているドライでスタートできれば良いなと思っています。雨、ウエットとなったら、出たとこ勝負の部分が大きいですね。

東條 力

チーフエンジニア

トムスの2台がQ1を共に3番手で通過したのを見れば、事前のテストから直前の練習走行、そして予選までの流れは順調だと判断できます。2台のセットアップの方向性は多少違っていますが、パフォーマンスとしては両方ともに良いと思っています。互いのテストの結果をシェアして、良いとこ取りをして今シーズンの初戦を迎えています。莉朋の6番手は、今シーズンフル参戦する彼にとっては、とても頑張ったポジションだったと思います。トヨタエンジン勢の2番手ですからね。予選の後に各ドライバーのQ1、Q2、Q3のタイムの上げ方を見ていたのですが、ホンダエンジン各車のタイムの上げ方、伸び代は、トヨタエンジンよりホンダエンジンの方が大きい。これがそのまま決勝でも同じ状況ではないと思われますが、予選での一発の速さがホンダさんにはありますね。それは去年もそうでした。中嶋選手は、惜しかった。でも、彼にもこういうことがあるという事ですね。決勝は、ウエットになる可能性がありますが、どうでしょう、雨量は多くないみたいですけれど、中嶋選手にとってはウエットの方がチャンスはあるでしょう。それも雨量多めのほうが良いかなと思います。

舘 信秀

チーム監督

朝一番の練習走行の状況を見ると、莉朋が頑張っていて、一貴は、まずまずという感じでしたね。今シーズンからフル参戦に臨む莉朋の気持ちが結果に出ていた。世界耐久選手権のチャンピオン経験者であり、F1の経験もある一貴ですから、全く心配はしていませんでした。予選はQ1で二人ともグループ3番手ですから、期待がかなり大きかったのですが、一貴がオーバーランしてしまってタイム抹消ということになってしまって、ちょっとビックリ。昨シーズンにニック(キャシディ)もオーバーランしてしまって、タイム抹消ということがあったのを思い出してしまった。それで一貴は13番手グリッド。莉朋は6番手。Q3に進出した8台の内、トヨタエンジンは3台。その中で莉朋が2番手という結果。昨シーズンもそうだけれど、ホンダエンジンの一発の速さはすごい。決勝グリッドのトップ4を独占されてしまった。ポールポジションから0.6秒の差をつけられてしまった莉朋。これは、彼の力だけでは無い。今後どうにかしなくてはならない。決勝は、雨模様と言われている。その状況だと一貴は、強さを見せてくれると期待している。もちろん莉朋にも頑張ってもらいたい。

決勝:レース内容

予選日の夜、富士スピードウエイのゲートには、ファンの皆さんの車両が翌日のゲートーオープンを待って、長い列を成していた。翌、日曜日の上空はどんよりとして、時折陽はさすが、決勝の行われる午後には雨の予報が出ていた。41周レースのスタート時点では雨は降らず、グリッド上の全車はスリックタイヤを装着。宮田莉朋は、スタートの反応は良かったが、1コーナーまでのスピードが乗らずに後退。中嶋一貴は、1コーナーの混乱に巻き込まれることなくAコーナーに進んでいったが、トラブル車両を避けようとしてコースオフして順位を下げた。残り10周くらいに小雨が降り始め、コースコンディションは、一部でハーフウエットとなったが、2台ともにスリックタイヤで走行を続け、宮田7位。中嶋は終盤に一気に順位を上げ11位でフィニッシュした。

●宮田は、グリッドに向かう途中Aコーナーでスピン。タイヤを痛めてしまい、グリッド上でタイヤ交換をしなくてはならなかった。
ウォームアップできず、内圧も上がっていないタイヤでスタートで5ポジション下げてしまった。
●中嶋は、スタート後の位置取りが良く、1コーナーで起きた混乱にも巻き込まれずに通過。しかし、トラブルでスロー走行していた車両を避けようとし、Aコーナーでコースオフして大きく順位を下げてしまった。
●その後、中嶋のペースは良かったが、前を行くマシンに阻まれ順位アップできず、19周してピットイン、タイヤ交換、スリックタイヤで再びコースインした。
●宮田は、前車をパスしながら10位以内に順位を戻し、31周してピットイン、タイヤ交換。小雨が降り始めていたが、スリックタイヤでフィニッシュを目指した。
●中嶋は濡れた路面で34周目にハーフスピンし順位を落とすが、39周目に順位アップ。宮田は、7位まで順位をもどした。

DriverCar No.Race / Fastest Lap
中嶋 一貴36P11  1’24.041
宮田 莉朋37P7  1’23.028

決勝:ドライバー・エンジニアコメント

中嶋 一貴

36号車ドライバー

スタートは悪くなかったですよ。そこから順位アップできそうな感じではあったのですが、雄飛(関口)がパンクでスロー走行していたので、Aコーナーでアウト側から抜かざるを得なくて、自ら縁石を跨いでパスしようとしたら、マシンが底打ちして突然ジャンプしてしまってコントロールを失い、大きく順位を下げてしまったので、レース自体はとても苦しい展開となってしまいましたね。でも、ペースは良かったです。前のマシンのペースが遅くてフタをされると容易にパスできないので、早くピットインしてくれないかなと思いつつ、こっちの方が早めにピットインすることにしました。そこで二つぐらい順位アップできたのですが、雨が降ってきてAコーナーで縁石に乗ってスピン。今回はAコーナーが鬼門でしたね(笑)。最後の3台抜きは、こっちに有利な状況が訪れてくれた結果ですね。第3セクターで黄旗が出ていて、皆詰まったところで最終コーナーを立ち上がり、3台のスリップストリームを使わせてもらい、オーバーテイクシステムを使って抜くことができました。

宮田 莉朋

37号車ドライバー

スターティンググリッドに向かってコースインし、Aコーナー出口でスピンしてしまいました。注意してブレーキングしながらアクセルを開けていた時にマシンが一気に右に入ってしまってスピン。タイヤの表面が削れてしまったので交換しなくてはなりませんでした。スタート自体は良かったのですが、グリップしてくれなくて、ホイールスピンして前に進んでくれませんでした。自分のミスでそうなってしまって、チームには本当に申し訳ないと思っています。朝のフリー走行でバランスが今ひとつ良くなくて、直前の8分間の走行でのセッティングが良かったので、それをレースに向けてアジャストしてもらって、決勝中はペース良く走れたのでスタート後に順位を5つ落としてしまったのが悔やまれます。作戦は悩んだのですが、後半に入ってからピットイン、タイヤ交換する作戦としました。レインタイヤを履くほどではない状況でしたが、第3セクターが一番濡れていて、滑りやすく、特に縁石はツルツルなので、気をつけて乗らないようにしながらプッシュしました。スタート直後の状況ではポイントは取れないかなと思っていましたが、7位で4ポイントゲットできて少しホッとしています。

大立 健太

36号車エンジニア

1周目のアクシデントで順位を下げてしまいました。関口さんがパンクでスローダウンしていたのをAコーナーで避けてコースオフして、マシンを底打ちしてしまい、スピン。クラッシュしなかったのは良かったです。底打ちのダメージ、タイヤのバイブレーションも無く、その後走行でき、ペースも良かったので残念ですね。他車に比較するとウイングは立てていた方(ダウンフォースが多め)だったので、1コーナーから最終コーナーで追い詰めても、直線が速いホンダエンジン勢を抜けないという状況でしたし、後ろからペースの良いマシンも来ていたので早めにピットインしてもらいました。決勝まで積み上げてきたセッティングの方向性は良かったし、一貴さんのドライビングにセッティングが機能していました。雨の予報もあったので、少しだけウエットになった場合の要素も加味してスタートしてもらいました。雨が降ってきて一度、一貴さんはスピンしているのですが、そこからまた順位アップ。そして、39周目の3台抜きはすごかったですね。よく周りが見えているなと思いました。

小枝 正樹

37号車エンジニア

朝の30分間のフリー走行でリヤが軽い(安定しない)という状況だったので、事前のテストでのロングランで良かったセットアップを施したところ、直前の8分間の走行で改善が見られました。しかし、もう少し足りないというので最後のアジャストをして送り出したのですが、コースイン時にスピン。これが今回の最大のミスというか、好成績に繋げられない原因でした。タイヤを交換して全く暖まっていないタイヤでスタートしなくてはならなかった。完全なコールドタイヤでスタートすることへの対処はしたことがなかったですから、そのままドライバーに頑張ってもらってスタートするしかなかったですね。案の定、リヤタイヤはグリップしてくれず空転するばかりで前に進まなかった。なんとかスタートポジションくらいまで順位を戻すことができたのは、マシンの状態が悪くはなかったという証明だったと思います。ピットイン後はコースが濡れていて順位を下げてしまったのですが、再び盛り返してくれました。

東條 力

チーフエンジニア

2台ともにスタートの周で順位を大きく下げてしまいましたね。途端に苦しい展開となってしまって、厳しいレースでした。莉朋は、コースインの周でスピンし、フラットスポットが少しあったみたいなので、バイブレーションがないようにグリッド上でタイヤを交換。完全なコールドタイヤですからスタートのタイミングは良かったのにタイヤがグリップしてくれませんから加速しない。1コーナーまでの混乱というか、各車の位置取りを乱したのは莉朋ですね。一貴も後方から順位を上げたいところだったのですが、結果的に良くなかった。そして。一貴は、Aコーナーでパンクした雄飛(関口)をパスしようとしてコースアウト。バリアにクラッシュしてもおかしくない状態だったのですが、なんとかそれを免れてくれました。天候の変化はあっても、レインタイヤを履くほどの状況にはならないと判断していました。それは正解だったのですが、少し雨が降ってきた時に一貴はスピンしてしまっていて、また順位を下げています。後半に、一気に3台をパスしたのはさすがでした。莉朋は、無難にスタートできていれば表彰台も獲得できたのではと思うと、惜しいレースでした。

舘 信秀

チーム監督

なんだろう、難しいレースではあった。でも、その状況下でちゃんと結果を出すチーム、ドライバーもいたわけだから、言い訳はできない。莉朋がスタートで大きく遅れ、一貴がトラブル車両を避けてコースオフという、スタート直後から展開はウチにとっては良くなかった。莉朋はグリッドに向かう時にコースオフしていたとは、ビックリだ。一貴がコースオフした時の状況を映像で見た時にクラッシュしてもしょうがないと思ったが、良く立て直してくれた。後方からのスタートでは、アクシデントに巻き込まれたり、思い通りのペースでラップできない。一貴の早めのピットインは良い判断だった。そして最後に彼らしい素晴らしいパッシングで一気に順位アップしてくれたのは圧巻だった。莉朋は少し引っ張ってからピットインしたけれど、その時に雨が降り始めていて、アウトラップがとても遅かったのは残念だった。ピットインのタイミングが悪かった。気象状況まではコントロールできないから。次戦は強いトムス、速いトムスをお見せしたい。

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