SUPER FORMULA 第3戦 レースレポート

開催
サーキット
オートポリス(4.674km)
日時 5月15日(土) 5月16日(日)
来場者 1,800人 2,930人
天候 雨・ウェット 雨・ウェット
気温 19-21℃ 22-22℃
路面温度 19-22℃ 21-21℃

予選:レース内容

全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦は、九州大分県のオートポリスで開催された。金曜日まで天候は安定していたが、予報通り、土曜日から荒天に見舞われることとなった。朝から強い雨が降り続き、雨が弱まると今度は霧が発生し、やがて濃霧となり、視界が確保できないほどだった。大会組織委員会と大会審査委員会は、天候の変化を逐次確認しながら、走行が可能なチャンスを見出し、スケジュールを変更しながら予選に漕ぎ着けてくれた。また予選についてはノックアウト方式から、時間内で全車がタイムアタックを行う方式へと変更した。予選中に4回の中断があったが、今回も中嶋一貴の代役として参戦した、ジュリアーノ・アレジが初ポールポジションを奪取。宮田莉朋が2番手を獲得し、Kuo VANTELIN TEAM TOM’Sの2台がフロントローに並ぶこととなった。 

●予選は、これまでのQ1、Q2、Q3ノックアウト方式から40分間のタイムアタック方式となった。
●天候の回復を待ち、予定された時刻から20分遅れで、小止みとなった雨の中セッションが始まった。
●雨の強さが目まぐるしく変化する中、コースオフしクラッシュするマシンが続出。予選中に4度の赤旗中断となった。
●セッションが中断される度に2台は、新たなレインタイヤを装着し、セッション開始と同時に勢いよくコースへ飛び出して行った。
●3度目の赤旗中断直前に宮田がトップに躍り出て、それにアレジが続いた。
●残り時間21分。再開後、やや雨量が多くなった中でアレジがトップに躍り出て、宮田と順位が入れ替わった。
●4度目の赤旗中断から再開時で残り15分だったが、雨量が増したコースコンディションではタイム更新は望めない状況だった。
●アレジは、参戦2戦目で初ポールポジションを獲得。0.085秒差で宮田が続いた。 TOM’Sがフロントローを独占するのは、2015年第6戦(菅生)以来だった。

DriverCar No.Q1Q2Q3
ジュリアーノ・アレジ36A P1 1’38.252
宮田 莉朋37B P2 1’38.337

予選:ドライバー・エンジニアコメント

ジュリアーノ・アレジ

36号車ドライバー

ポールポジションを取れた。自分でもすごいと思った。こんなに難しい、変化の多いコンディションだったから、タイムが出せるか全くわからなかった。今回もSUPER FORMULA LIGHTSとダブルエントリーだから、マシンを乗り換えて、気持ちも入れ替えて、そして集中しなければならないという難しい状況だったから、最高の予選結果を出せたことが本当に嬉しい。これもチームが完璧なマシンを用意してくれたからだ。ボクはそれをちゃんと走らせることができた。だから結果が出た。チームの力によって獲得できたポールポジションだ。前戦の鈴鹿でSUPER FORMULAは甘くない、難しいカテゴリーだということは分かっていた。なにせ今回初めてのオートポリス。まだまだ学ぶべきことは多く、まだ一生懸命にコースに慣れている状況なので、ダブルエントリーで周回数が多かったのはプラスだった。ただでさえ難しい状況なのに雨、ウエットは精神的にも厳しかった。その中で獲得できたポールだからスーパーハッピーだし、「サイコー!」明日は、スタートを決めることに集中する。ポールを取れたのはチームの力。ボクをここに引き上げてくれたチームに感謝している。

サンキュー、トムス。

宮田 莉朋

37号車ドライバー

悔しいですね。トップに立っていた時点で残り時間が20分以上もありましたから、まだ安心できないとは思っていました。あそこで大雨が降れば決まりましたけれど、安心はしていませんでした。赤旗が出てから再開される毎にニュータイヤでコースインしていました。2周目にタイムを出したドライバーもいましたけれど、無理してタイヤを痛めることは避けたいと思い、2周までにちゃんとタイヤを温め、3周目にタイムを出すようにしていたのですが、雨の量が多くなり、アレジ選手はスクラブしたタイヤだったので、あっちの方が温まりが早くて、2周目にタイムが出せた。難しいコンディションでしたが、幸いコースオフするこなく周回できました。目の前で大嶋選手がクラッシュするのも見ましたし、注意しなければならないと思いましたが、できる限りプッシュはしていました。その中でも無茶をしてはいけないなと思いつつ走りました。100%以上で走ったらダメで、限りなく100%ギリギリのところで走っていました。最後のアタックで車高を少しアジャストしてもらい、それに賭けていたのですが、意に反して雨の量が多くなってしまいました。ちょっとついてなかったですね。それでもフロントローからのスタートですから、優勝を狙います。

大立 健太

36号車エンジニア

難しいコンディションでポールを取れたのは嬉しいですね。ジュリアーノはオートポリスは初めてだし、このマシンでこの雨、ウエットも初めてですから、どこまで頑張れるかはわかりませんでした。赤旗で中断される毎に気象状況をチェックしてどう対応しようか考えていました。最後のアタックでは、東條チーフエンジニアのアドバイスで作っておいたスクラブタイヤを装着して出ていってもらいました。トムスのピットの位置は、一番先にコースインできるというメリットもありました。それも莉朋選手よりも先に入れるので、自分のペースでアタックに入ることができたと思います。彼は1周目からプッシュするスタイルなので、それに対応できるタイヤ内圧をセットして、コースコンディションに合わせて車高の調整をアジャストしていました。フリー走行の段階ではボクが車高の設定をミスしてしまっていたので、その点を37号車の小枝エンジニアにデータ共有をしていただいて、そのセットで予選に臨みました。それにジュリアーノが合わせてドライブしてくれたので、ポールを獲得できたのだと思います。このようなコンディションでは、ドライバーの力が90%ものを言うと思います。すごいドライビングでした。

小枝 正樹

37号車エンジニア

残念でした。本当に残念でした。ジュリアーノがタイムを出した時に莉朋もアタックしていたのですが、タイヤの温まりが1周遅かった。そして雨がまた少し強くなってしまった。朝のフリー走行の段階からセットアップはそれほど悪くなかった。タイムは出ていませんでしたが、それはセッティングの問題ではなく、トラフィックに捕まったりしていたので、そこから足りない部分をアジャストしていって予選に臨んでもらいました。予選に入って、アジャストした部分が良い方向ではなかったかなという点もあったので、それを戻しつつアタックを繰り返しました。それが解決しきれていなかったかなと思います。でもこのパフォーマンスを発揮してくれたのはドライバーの頑張りです。こちらとしてはセットアップが足りなかったので、申し訳ないと思います。予選再開の度にニュータイヤをセットしたのは、このレインタイヤでしっかり走るのは初めてなので、使い込んだタイヤよりニューで出ていった方が確実性が高いと判断しました。ジュリアーノはスクラブタイヤだったそうで、それによって温まりが1周異なった。それが結果として出ましたね。

東條 力

チーフエンジニア

悪天候の合間に予選を行うことができ、オーガナイザーさんの判断に感謝しています。悪天候は予測していましたが、予想以上にひどかったですね。最終的にウチの2台がフロントローを独占できてとても良かった。スピンするような気配もなかったし、強かった。莉朋もジュリアーノもよく頑張ってくれました。今回は、タイヤがキーでした。フリー走行の時点からタイヤ内圧を上げたり、下げたりして、状況に合った内圧をチェックしていました。メカニカルな面では予選中はアジャストだけです。特にジュリアーノはこのコースもこのマシンで雨も初めてですから、セットアップは変えずにタイヤの内圧をその都度変えてアタックしてもらいました。雨、ウエット状況ではメカニカルよりタイヤの内圧の方がドライバーに対する感度が高いことが多いのです。莉朋はポール取れたと思っていたでしょう。しかし、最後のアタックは莉朋がニュータイヤ。ジュリアーノは1セットだけスクラブタイヤを持っていて、それで出ていったら雨がふり始めて、ジュリアーノのタイヤの方が温まり良かった。久しぶりのフロントローです。一貴(中嶋)にメールしたら、「アンドレ(ロッテラー)と1-2取れた時以来でしょうね。」って、返ってきました。

舘 信秀

チーム監督

スケジュールが変更されて、変更されたスケジュールも天候の変化によって遅れる状況の中で、ドライバーもチームスタッフも緊張感を保って、なおかつコンディションの変化に対応してよく頑張ってくれた。宮田莉朋とジュリアーノ・アレジの若いドライバーがポールポジション争いを展開するという最高の結果だ。莉朋は、最後のアタックでジュリアーノに逆転されて悔しかったことだろう。チームメイトといえども一旦コースインしたらライバルだし、2台のマシンのサポートは、各々エンジニアがついていて、作戦が異なることもある。それが結果として出たわけだな。最後のアタックで、ジュリアーノはスクラブ(皮剥き)したタイヤでコースインして2周目にタイムを出し、莉朋はニュータイヤで出て、3周目にタイムを出そうとしていたと聞いた。しかし、雨が強くなって、莉朋の作戦は結果を出せなかった。天候とコースコンディションに翻弄された予選のドラマだった。それでもTOM’Sの2台がフロントーに並んだ。とても久しぶりの嬉しい結果だ。ジャーナリストに聞いた。2015年第6戦のアンドレ・ロッテラーがポール、中嶋一貴がセカンド。6年ぶりの快挙だ。嬉しい。

決勝:レース内容

決勝日を迎えて、断続的な強雨、濃霧、そして時折、台風を思わせるような突風が吹き荒れた。予選日と同じく大会組織委員会と大会審査委員会は、決勝を実現するべく気象状況をチェックし走行可能なスケジュールに変更した。同時開催のサポートイベントは中止されたが、メインイベントのSUPER FORMULAは、予定時間から45分遅れでスタートが切られた。ポールポジションからスタートしたジュリアーノ・アレジは、トップポジションをキープして1コーナーに進入。宮田莉朋は、スタートで出遅れてポジションを下げてしまった。そして1コーナーで起きてしまったアクシデントによってセーフティーカーがコースイン。レース再開後もアレジはトップをキープ。10周目に雨が強くなって再びセーフティーカーがコースイン。12周して赤旗が提示されてレース中断。そのままレース終了が判断され、アレジが初優勝。宮田はポジションダウンした8位から追い上げて4位フィニッシュした。

●アレジは、絶妙なスタートを切ってトップをキープし、一気に2位との差を開いた。宮田はスタートの反応は良かったが、ホイールスピン量が多く後退。1コーナーで複数台が接触、ストップするというアクシデントが起き、車両の排除のために1周目から5周目まで、最初のセーフティーカーがコースインした。
●再スタート後も、アレジは後続を従えてトップを走行。雨が強まって10周目に2回目のセイフティカー導入。12周目に赤旗が提示されてレース中断。
●レース再開が検討されたが、天候の回復が望めず、13周してレース終了が宣言された。正式結果は、2周前の11周終了時の順位で決定された。
●宮田は、1周目に1コーナーでコースオフし、大きく順位を下げたがその後猛追して4位まで順位アップしてレースを終えた。
●選手権ポイントは、ハーフポイントが与えられた。

DriverCar No.Race / Fastest Lap
ジュリアーノ・アレジ36P1/1‘43.536
宮田 莉朋37P4/1’43.897

決勝:ドライバー・エンジニアコメント

ジュリアーノ・アレジ

36号車ドライバー

とても良いスタートを切ることができた。最高だったと思う。だけどすぐにセーフティーカーが入ってしまって、好スタートのメリットは無くなってしまった。セーフティーカー明けのリスタートも決まった。すぐにタイヤを温めることもできたし、ラップ毎にペースも上がってきた。マシンのセットアップが完璧だったから自分が頑張れば結果は出せると思って走っていた。天候の変化は心配だったけれど、チームがここまで素晴らしいマシンを用意してくれているのだからミスなく頑張れば初優勝だって可能だと思いながらドライブしていた。クラッチミートが難しくて、決勝のスタートまで失敗ばかりだったのだけれど、本番で最高のクラッチミートができた。リスタート直前にアクセルを開けすぎてマシンがバランスを崩したけれど、なんとか立て直すことができて良かった、あのままスピンしたら終わっていたね。モニターを見ていたエンジニアやスタッフには心配をかけてしまった。両親にも心配をかけてしまった。11周という短いレースだったけれど一度もトップの座を明け渡すことなくフィニッシュできたことはグレートだった。これも最高のマシンを用意してくれたチームのおかげだと感謝してます。

宮田 莉朋

37号車ドライバー

スタートで何故かエンジン回転が下がってしまって、「あれ?」と思っていたら、今度は一気に回転が上がって、ホイールスピンしてしまって、そこで順位を下げてしまった。この症状は今回が初めてではなかったので、事前にクラッチの温度とか他の対処をして臨んだつもりだったのですが、また再発してしまいました。しかし、問題点はわかっているので、次戦の菅生では大丈夫だと思います。その点は今後へポジティブに捉えています。スタートで出遅れたために、1コーナーでアウト側の位置どりになってしまった。阪口選手をパスしようとしてブレーキロックしてしまい、そのままコースオフして、そこでまた大きく順位を下げてしまいました。でも、その後はマシンの調子は良くて、トップグループと同等のペースでラップできました。小枝さんがボクの好みをどんどん理解してくださり、かなり良いセットアップができるようになってきているので、ウエットでも自信はありました。セーフティーカーラン明けに何台もパスできたし、もっと周回できたのならトップまで追いつけると思っていたので、残念ではありました。少なくともスタートの順位までは戻せたと思います。

大立 健太

36号車エンジニア

ジュリアーノがスタートでホイールスピンの量を最小限にとどめてくれて最高のスタートを切ってくれました。練習では、ホイールスピン量が多かったので、アジャストとしては、クラッチのバイト、ミートを少しルーズ方向に持っていってはいましたが、ジュリアーノがうまくミートしてくれました。最初のセーフティーカーランが明ける直前に、上りのセクションでバランスを崩したシーンがありました。あれでもう終わったかと思うほどだったのですが、なんとか立て直してレースを続けられました。その直後に後ろの関口さんがコースオフ。そして松下さんが差を詰めてきたのですが、多分タイヤの内圧が違っていて、数周すればジュリアーノのペースも上がってくると思われたので、彼には後ろの松下さんのペースはだんだん上がらなくなってくるから心配はないと伝えました。もしレースが続いていたらどのような展開になっていたかはわかりませんが、ジュリアーノのペースは悪くはなかったです。野尻さんが順位アップしてくることは確実だったし、莉朋も上がってきたでしょうね。ラッキーな面もありましたが、優勝できて本当に良かったです。

小枝 正樹

37号車エンジニア

スタートで出遅れてしまったのが本当に残念ですね。クラッチをミートしてエンジン回転が下がってしまって、それを補おうとしてアクセルを少し踏んでホイールスピンが起きて、という状況だったのですが、練習走行の段階からクラッチのミートに関して調整を進めてはいましたが、メカニカル的な調整がうまくいかなかったのは、申し訳なく思っています。しかし、その後はとても良いペースで追い抜いてくれていたので、セッティングは間違っていなかった。もう少しレースが長かったら、もっと上位に上がってきたのは確実だと思うので、スタートと1周目のコースオフは、もったいなかったと思っています。莉朋と3戦を戦ってきて、彼の好みのセッティングがだいぶわかってきました。そして、セッティングで足りなかった部分を彼が補ってくれていますので、これからがとても楽しみです。違うコース、コンディションによって話は違ってきますけれど、期待は大きいと思います。次戦の菅生では結果を出したいと思います。

東條 力

チーフエンジニア

ジュリアーノの初優勝はすごいことだと思います。2戦目、ウエットコンディションで優勝ですからね。まず、スタートが決まった。直前のウォームアップでのスタート練習ではホイールスピンばかりしていましたから、それをちゃんと修正していましたね。そして、ペースも悪くなかったです。あのペースで走行できていれば、抜かれる心配はなかったと思います。逆に莉朋は対照的にホイールスピンしてしまっていました。出だしの反応は良かったのですが、その先でホイールスピンしてしまって前に進んでくれなかった。他のカテゴリーのようにセーフティーカースタートだったら、彼はあそこまでポジションを下げることはなかったでしょう。もったいなかったですね。しかし、その後のペースはトップグループと同等だったので、レース周回数がもっと多かったら、さらに順位を上げられたでしょう。ジュリアーノとトップ争いができていたかもしれないですね。あと1周、2周走っていたら表彰台には立てていたでしょう。

舘 信秀

チーム監督

悪天候の中、決勝のスタートに漕ぎ着けることができたのは、第3戦の大会組織委員会と審査委員会の皆さんの判断と決断、また安全を優先してレースを運営してくださったオフィシャルの皆さん、そして、九州で唯一行われる国内トップフォーミュラのレースに、足を運んでくださったファンの皆さん、全ての方々へお礼を申し上げたい。フルラップのレースをお見せすることはできなかったが、短いレースの中でもドラマがあり、その中でジュリアーノが主役、ヒーローになった。難しいコンディションの中で落ち着いてトップをキープして優勝してくれた。結果を出すにはもう少し時間がかかると思っていたが、こんなに早く優勝するとは驚いた。彼はやはり、【持っている】ね。まだまだ学ばなければならないことは多いと思うが、もっと学んで素晴らしいドライバーに成長していってほしい。宮田はスタート、そして1コーナーでコースオフしてしまうという、ジュリアーノとは対照的な展開になったけれど、諦めずに追い上げてくれた。そのペースはジュリアーノと同等だった。もっとレース周回数が多ければ、トップ争いまで持ち込めたのではないかと思う。次戦に期待している。

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