SUPER FORMULA 第4戦 レースレポート
開催 サーキット |
スポーツランドSUGO(3.621km) | |
日時 | 6月19日(土) | 6月20日(日) |
来場者 | 2,600人 | 4,600人 |
天候 | 雨・ウエット | 晴れ時々曇り・ドライ |
気温 | 19-20℃ | 24-28℃ |
路面温度 | 21-22℃ | 34-34℃ |
予選:レース内容
2021年シーズンの折り返し、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦は、宮城県村田町のスポーツランドSUGOで行われた。金曜日までは、初夏を感じさせるコンディションではあったが、翌日土曜日は朝から雨となった。 Kuo VANTELIN TEAM TOM’S 36号車は今回も世界耐久選手権レースに出場した中嶋一貴に代わって、ジュリアーノ・アレジがステアリングを握った。ウエットコンディションの中で行われた予選では、37号車のレギュラードライバー宮田莉朋が、Q3まで進出して4番手のグリッドを得た。アレジは、スポーツランドSUGO初走行ながら、同じくQ3まで進出して6番手グリッドから決勝をスタートすることとなった。2列目、3列目のイン側から二人の若きドライバーが決勝に臨む。
●予選前、ウエットコンディションでの練習走行は、3回の赤旗中断を挟み終了。宮田は5番手、アレジは10番手だった。
●本来は、予選のQ1のみA、Bのグループ分けを行っていたが、今回はQ2までグループ分けすることとなった。宮田はA、アレジがBグループでタイムアタックを開始した。
●Q1は宮田3番手、アレジ5番手でQ2に進出。Q2では宮田は2番手でQ3に進出を決めた。
●アレジは、Q2のセッション開始早々に単独スピンアウトするもコースに復帰。3番手のタイムをマークしていた時に、複数の車両がコースオフしたため、ストップしてセッションが中断した。残り3分でセッション再開。3番手のままQ3進出を果たした。
●8台によるQ3において、宮田は果敢に攻めた走りで4番手タイムを記録、アレジは6番手タイムをマークした。
●宮田は2列目、アレジは3列目の共にイン側のグリッドに位置して決勝を迎えることとなった。
Driver | Car No. | Q1 | Q2 | Q3 |
ジュリアーノ・アレジ | 36 | B P5 1’20.313 | B P3 1’21.079 | B P6 1’20.371 |
宮田 莉朋 | 37 | A P2 1’20.176 | A P2 1’19.143 | A P4 1’19.799 |
予選:ドライバー・エンジニアコメント
ジュリアーノ・アレジ
36号車ドライバー
難しい予選だったけれど、その中でも6番手のグリッドを得られたのはすごくハッピーだ。スプラッシュで視界も良くなかったし、ギリギリでQ3に残ることができた。予選で頑張ったことを決勝につなげて良い結果にしたい。Q2で一回スピンしてしまったのは、完全に自分のミステイクだった。エンジンが止まらなかったのは本当にラッキーだった。アンダーステアが出ていて、それは雨のせいだと思うのだけれど、なんとかもう少しバランスが取れないかエンジニアの健太さんにお願いして、自分もドライビングでなんとかならないかをトライしていたけれど、完全には治らなかった。明日の決勝はドライコンディションになるから、いかにそのコンディションに短時間でセッティングを合わせられるかが重要だけど、それはどのチーム、どのドライバーにも共通していることだから、ボクらだけの問題ではない。できる限りの努力をして頑張るだけ。
宮田 莉朋
37号車ドライバー
手応えを感じられずに予選が終わってしまったという感じですね。オートポリスでは走る毎に手応えがあってドライブできていたのに、同じウエットコンディションでも今回はどうにもならなかった。それでもシングルポジション、4番手にいるのは良かったと思います。なんとかマシンのバランスを良くしようとフリー走行で四苦八苦して、予選に臨んだのですが、改善しきれずに終わってしまったのにシングル、4番手タイムで終えることができた。しかし、コンディションが悪い中でも関口さんや牧野選手はタイムアップしてきたし、セルモインギングの2台はタイヤの温まりもブレーキの温めも良かったと見えました。ほんの少しの違いなのですが、それをボクらは見つけることができなかった。今後のウエットセットアップではそれを見つけ出すことが課題です。朝の練習走行から予選を通してとにかく曲がってくれない。セッティングをいろいろ変えてもらいましたが、その症状は変わらない。空力を変え、スプリングの交換まで行ってもらったのですが、変化はなかった。ドライビングでなんとか曲げて、Q3では攻めた結果SPコーナーのアウトでホイールスピンしてしまい、馬の背でははみ出してしまったりして、不満足な予選でありました。
大立 健太
36号車エンジニア
Q3まで進出はできましたが、Q2で2台のマシンが赤旗中断の原因となって敗退した分、前に行くことができ、運に助けられたと思います。Q2では単独スピンもあって、あれで予選は終わったかと思いましたが、幸いエンジンはストップしていなかったので走行を続けることができました。今回ウエットの予選でジュリアーノがアンダーステアーが強いと訴えていたので、それを少しずつ解消しようとしていたのですが、最後まで消すことができなかったのは申し訳なかったです。タイヤを温めて、計測4周目にアタックをしたのですが、ポールポジションを獲得した関口さんは計測3周目にタイムを出していた。ウチはそれが無理だったので、もっとタイヤへの入力を高めたセットアップで、もう少し早く温めて、タイヤ自体がシャキッとしている状態でアタックできるようなセットアップができていたら、もっとタイムアップできたのかと反省しています。そのような苦しい、難しい状況の中で一回スピンはしていますがジュリアーノはQ3まで進出してくれた。決勝のドライでも頑張ってくれるようにドライセットアップをしっかりしたいですね。
小枝 正樹
37号車エンジニア
今回の予選4番手は、全て莉朋の頑張りで得た結果ですね。ジュリアーノと状況は同じで最初から最後までマシンとしてはとても乗りづらい状況だった。なんとか改善してあげたかったのですが、それができなかったのは申し訳なかったです。とにかくマシンが曲がってくれない。曲げようとするとリヤが不安定になるという症状でした。しかし、そんなコンディションの中でもセルモインギングチームの二人や関口、牧野選手はタイムを出してきていたのは、タイヤがより早く温まる、そして曲がる状況だったのでしょうね。どこのチームでも時間は限られているので、その中で良いハンドリングを生み出すためのアジャストをしきれなかった。決勝はドライでしょう。そうなると一気にドライセッティングに変えるわけですけれど、その確認は、朝のフリー走行ではまだ完全なドライではない可能性があるので、決勝直前の8分間でどう合わせ込むかにかかっていますね。ドライセッティングの方向性はシーズンが進むにつれて良くなってきているので、あまり心配はしていません。あとはスタートが決まれば順位アップは可能だと考えています。
東條 力
チーフエンジニア
当然もう少し上位に行きたかったけれど、結果としてはまずまずの予選であったと評価しています。朝のフリー走行と雨の量、路面の水の量が異なっていて、朝の方が水が少なかったのでセッティングに関してはあまり参考にならなかった。ですから、予選は、また最初から状況に合わせてセッティングしていったということですね。しかし、予選で雨の量が増したことで、ヨコハマさんのレインタイヤには良かったと思います。セッション毎に雨の量が多かったり少なかったりしていたので、そのタイミングに合わせ込むことが難しかったと思います。莉朋はもう少し上に行けたと思うし、行って欲しかったのですが4番手に留まってしまった。彼も悔しいでしょうけど、チームとしても悔しかったですよね。ジュリアーノは、初めてのSUGOでそれも雨、ウエットでQ3まで進出してくれたので上出来と評価しています。決勝はドライでしょう。短時間でドライのセットアップをすることになりますが、練習走行は完全なドライではない可能性があります。そこは、これまでに蓄積したデータで乗り切ります。あとは、スタートですよね。スタートで前に出られたら良いレース展開になると信じています。
舘 信秀
チーム監督
前戦のオートポリスでジュリアーノが優勝して、嬉しい驚きを感じ、莉朋も毎戦力強さを増してきてくれている。トムスの歴史の中で二人のルーキードライバーを擁して戦うのは初めてなので、ワクワク、ドキドキする。ジュリアーノにとっては、初めて走るサーキットばかりだし、それを莉朋が良いアドバイスを与えてくれている。今回もジュリアーノはSUPER FORMULA LIGHTSとのダブルヘッダーで戦うが、体力的に大丈夫かなと心配していたが、それは全く問題ないらしい。若いというのは素晴らしい。ウエットコンディションの予選でいまひとつセッティングが進まなかったようだ。それでも若いドライバー二人がQ3まで進出してくれたことに満足している。もちろんもっと上位で予選を終えてくれることを望まないことはないけれど、ものすごく僅差の中でベテランたちと対決して予選を終えたのだから・・・。それを支えているチームの力があることを改めて実感した予選だった。決勝は、ドライで出来そうなので、またワクワク、ドキドキ。楽しみにしている。
決勝:レース内容
決勝日の天候は、予報通りに晴れ時々曇り。コースコンディションは、ドライとなった。朝一番、30分間のフリー走行と決勝直前の8分間でドライセッティングを決める作業をした後に53周の決勝レースを迎えた。宮田莉朋、ジュリアーノ・アレジともにスタートの反応は良かったが、2番手スタートの車両が失速していた。また、イン側の位置取りでラインを変えることもできずにスタート直後に順位を落とす展開となった。スリックタイヤのタイヤ交換義務をレースの半ばから後半に入ってから消化する作戦を取り、ピット作業も素晴らしい速さで再びコースに送り出すことができた。宮田は、トヨタエンジンユーザーの中では2番手となる7位。アレジは、レース後半で果敢に攻めてパッシングして順位アップに成功。9位でレースを終えた。
●決勝直前フリー走行、8分間で宮田はセッティングチェックを行い、アレジはタイヤの表面のスクラブ(皮むき)に費やした。
●宮田、アレジのスタートの反応は素晴らしかった。しかし、2番手グリッドからスタートした車両が失速気味のスタートをしたために加速することができなかった。スポーツランドSUGOは1コーナーまでの距離が短く、アウト側からスタートした車両が連なっていて順位アップはできず、宮田は6番手、アレジ7番手で1周目を終えた。
●上位陣がピットインを開始するまで宮田5番手、アレジは7番手のまま周回を重ねた。18周目にアレジは馬の背で1台をパスすることに成功した。
●25周してアレジがピットイン、タイヤ交換して再びコースイン。その時点での順位は11位。
●宮田は27周してピットイン、8位で復帰。
●終盤までピットインを済ませていなかった車両がピットインして、ひとつずつ順位アップ。アレジは、39周目に再び馬の背で順位アップした。
Driver | Car No. | Race / Fastest Lap |
ジュリアーノ・アレジ | 36 | P9/1‘07.672 |
宮田 莉朋 | 37 | P4/1’07.866 |
決勝:ドライバー・エンジニアコメント
ジュリアーノ・アレジ
36号車ドライバー
初めてのSUGOで初めてドライでSUPER FORMULAの決勝レースを走るというのは、難しい経験だった。でもなんとか9位でポイントをゲットすることができた。チームが素晴らしいマシンを用意してくれて、最大限のサポートをしてくれた結果だと思います。SUGOでパッシングをするのはとても難しくて、前のマシンに追いついても簡単にパスすることはできなかった。最初のスティントで阪口選手、そしてセカンドスティントで大津選手を共に馬の背コーナーでパスできた。馬の背が自分にとっては最大のパッシングポイントと決めて、そこでチャレンジした。毎戦多くの事を学んでどんどんドライビングをインプルーブ出来ていると思う。毎レース全力を出して、できる限りの力で良い成績を目指して走り続けて行けばもっと良い結果をどんどん出すことができると信じている。これからどれだけのSUPER FORMULAレースに出場できるかわからないけれど、全てが自分の経験になるので、与えられたチャンスは逃さずに頑張りたいと思います。
宮田 莉朋
37号車ドライバー
スタートは改善できて、反応もその先の出だしも良かったのですが、前の牧野選手がスタートを失敗して、それに続いて1コーナーに入って行って、アウト側にはマシンがいたのでラインを変えることもできずに順位を落としてしまいました。結果的には、良くも悪くもなくレースを終えたという感じですかね。朝と直前の8分間でセットを決め込んで行ったのですが、決勝では路面温度が一気に上がって、それにマッチしたセットアップだったかというと完全ではなかったですね。最終コーナーでうまく曲がってくれなくて、牧野選手に追いつくことができなかったですし、オーバーテイクシステムを使っても追いつくことができなかったです。ピットイン前に予想以上にタイヤのグリップダウンがありました。予定の周回まで頑張ったのですが、もう少し前でピットインしていたら展開は変わっていたかもしれません。また、タイヤのグリップダウンがなかったら、もっと引っ張って、燃料がもっと軽くなったところでフレッシュタイヤを履いてファステストラップを狙うことができたかもしれません。その点は今後の課題にしたいと思います。今回の迅速なピット作業に対しては、チームに感謝しています。
大立 健太
36号車エンジニア
結果としては、良くないレースをしてしまったかなと思います。スタートで前を抑えられたということはありましたが、その後のペースも決して良くはなかったですね。2セット目のタイヤで出てすぐはペースが良かったのですが、その後はペースダウンしてしまったので、もう少し良いセッティングができていれば、順位をもっと上げられたのではないかと考えています。それでもジュリアーノは、阪口選手と大津選手をパスしてくれた。それは彼の頑張りです。最初のスティントで阪口選手、そしてピットイン前に一回コースオフしてしまってタイムロスしてしまっているので、レースに復帰した時に大津選手の後ろに入ってしまった。コースオフがなかったらもっと前で復帰できて順位をアップできたのですが、それが残念です。ドライのセットアップは朝のフリー走行で終えて、直前の8分間にはタイヤのスクラブを行っただけだったので、セッティングが詰めきれていなかったのは否めない。リヤのグリップが足りないというインフォメーションがあったので、セットアップを進められていたらコースオフもなかったのではないかと申し訳ない気持ちです。
小枝 正樹
37号車エンジニア
今回は、課題だったスタートが良かったのに不運でした。前のマシン、牧野選手がスタートを失敗して完全に詰まってしまった。本当に不運としか言えなかったですね。朝のフリー走行でも感触は良くて、ドライセットも細かなアジャストをしただけでした。しかし、完全かと言えば、そうではなくて、それはドライで走り込みができていなかったことが大きいと思います。一気に気温、路面温度も上がったのですが、タイヤの内圧のセッティングなどは特に問題なくできたと思います。しかし、走行中の内圧の変化は当然ありますから莉朋自身がそれをどう処理するかはまだ彼も勉強中だと思うし、エンジニアリングの部分でも今後夏になってどうセットアップをして行くかを考えなくてはなりませんね。作戦ではセーフティーカーが入るなどの変化があったらすぐにピットインできる体制はとっていましたが、何も起こらずに進んだので、当初の作戦通りに序盤でタイヤを労りつつ引っ張ってもらいました。中盤でタイヤがだんだんとキツくなってきたので、結果論ですが、もう少し早めにピットインしてフレッシュなところでタイムアップする作戦の方が良かったかという反省点もありました。
東條 力
チーフエンジニア
莉朋、ジュリアーノともにスタートで前を抑えられてしまったので、順位を下げて始まった決勝でしたね。その後も悪くはなかったのですが、比較的にホンダエンジン勢のペースが良くて、二人とも頑張ってくれたのですが思うようにペースが上がらず、順位も上げることができずに終えてしまった。トムスチームとしてのレース展開は決して悪くなかった。ピットの作業も迅速であったし、我々ができる最良のレースができたと評価していますが、それが順位、結果に結びつかなかった。作戦的にも良かったと思います。スタートで前に出られていたら、順位を落とすことがなかったら、展開は変わっていたと思います。莉朋の前がもっと空いていたら、スタートの順位ぐらいまでは上がっていけたのではないでしょうか。ジュリアーノは抜きにくい、このSUGOで2台をパッシングしてきました。よくパッシングできたなと感心しています。
舘 信秀
チーム監督
終わってみれば、莉朋が7位、ジュリアーノが9位で二人ともにポイントをゲットしてくれた。
スタートでとても反応が良かったので順位アップできるかと思ったのだけれど、前にいたセカンドポジションのマシンがスタートを失敗してしまって、その先の1コーナー、2コーナーで全くよくない位置どりとなってしまった。そこで二人とも順位を二つ落とすことになってしまったのだから、スタート直後から苦しい展開だった。上位陣が思っていたより早めのピットインだったが、ウチの作戦は悪くなかったと思う。セーフティーカーが入るかどうかなど不確定な要素を考えていたのはもちろんだが、早めにピットインするか、ウチのようにレース半ばで入るかのどちらが正解かは判断がつかない。メカニックたちの作業もとても迅速だったし、サポート面ではミスはなかった。素晴らしい仕事をしてくれた。莉朋の前、6位までの顔ぶれを見るとホンダエンジンユーザーが多い。ストレートスピードを見てもホンダは速かったかな。次戦のもてぎではなんとか巻き返したいと思っている。