SUPER FORMULA 第7戦 レースレポート
開催 サーキット |
鈴鹿サーキット(5.807km) | |
日時 | 10月30日(土) | 10月31日(日) |
来場者 | 6,000人 | 10,500人 |
天候 | 曇り時々晴れ・ドライ | 曇り・ドライ |
気温 | 21-21℃ | 21-21℃ |
路面温度 | 30-30℃ | 25-26℃ |
予選:レース内容
2021シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権は、この第7戦鈴鹿で最終戦を迎えた。前戦の第6戦から2週間のインターバルを経て、SUPER GTへと連戦が続く。Kuo VANTELIN TEAM TOM’S 37号車宮田莉朋は、今シーズン全戦でポイントをゲットしており、ルーキードライバーながらランキング10位。ルーキー・オブ・ザ・イヤー候補の一人だ。36号車は、レギュラードライバーの中嶋 一貴が世界耐久選手権出場のため、ジュリアーノ・アレジがコクピットに収まる。午前中の練習走行で2台は好調な滑り出しを見せた。宮田は今シーズン最高の仕上がりで予選を迎え、Q3まで進出、ポールポジション獲得の期待がふくらむ6番手。アレジは、Q2へ進出を果たし、13番手のグリッドを得て30周の決勝をスタートする。
●宮田は、練習走行で2番手タイムを記録して予選を迎えた。
●宮田がAグループ。アレジがBグループの組み分けとなった。
●宮田は、Q1とQ2でトップ通過。国内トップフォーミュラシリーズにおいて初のポールポジション獲得へ向けてQ3へ臨んだ。
●アレジは、トップから0.77秒差でQ1を通過、Q2へ。出場している全てのレースでQ1突破を果たした。
●Aグループに比較してペースが上がり、生き残りが厳しい状況となったBグループの中で、自らQ1のタイムを0.6秒以上タイムアップしながらも、アレジはQ2で敗退してしまった。
●宮田は、Q3でもタイムを着実に短縮し、ポールポジションを目指したが、Q3に進出した8台のうち6台がホンダエンジン勢でトップ5を占め、宮田は6番手、トヨタエンジンユーザーのトップとして決勝に臨む。
Driver | Car No. | Q1 | Q2 | Q3 |
ジュリアーノ・アレジ | 36 | B P7 1’38.292 | B P7 1’37.687 | – |
宮田 莉朋 | 37 | A P1 1’37.654 | A P1 1’37.335 | P6 1’37.177 |
予選:ドライバー・エンジニアコメント
ジュリアーノ・アレジ
36号車ドライバー
練習走行の最初のセットアップはとてもバランスが良くて、すぐに良いタイムが出たけど、次のセットアップでなぜかタイヤのウォームアップが良くなくて、タイムアップすることができないまま、予選を迎えることになった。練習走行から予選までの間に、エンジニアと一緒にセッティングをもう一度見直して、予選までにバランスが復調したおかげでQ1を突破できた。でも、まだスピードが足りない。それはなぜなのか。もっと細かくデータを見て、勉強してタイムアップにつながる何かを見つけて、ボク自身ももっと頑張って、もっと良い結果を出せるようにしたい。でも、Bグループはすごくタイトなタイムの争いだった。本当にすごかった。それでQ3には行けなかった。後ろの方から決勝をスタートするけれど、まずスタート。ミスなくスタートして1周目は絶対にコンタクトしないこと。その次にラップbyラップ、ステップbyステップで順位を上げること。それだけ。頑張ります。
宮田 莉朋
37号車ドライバー
前戦のもてぎの走り出しが不調過ぎて、あの時はSuper Formulaで初めて絶望感を味わいましたが、今回は走り出しから好調です。シーズン前のテスト、第2戦の鈴鹿、そして、ニック(キャシディ)選手のデータを見直して、ボクに何が足りないのかをチェックしました。できる限りのことをして臨んだ最終戦の鈴鹿ですから、練習走行、予選のQ2までの結果に表れたと思います。実は練習走行の際、より良い状態を求めてトライしたセッティングで、逆バンクでスピンしてしまいました。よって、そのセッティングはダメだなと。元に戻してもらいました。ドライでしたが、路面温度の微妙な変化なのか、コンディションは少しづつ変化していたので、それに合わせこむセット、走りが必要でした。ボクのドライビングスタイルに合致するセッティングをしていただいたので、あとは自分自身が頑張ればもっと上を狙えると思っていました。でも、予選トップとのタイム差は大きかった。全てが完璧でもあと一つか、二つポジションを上げられただけだと思う。シーズンを通してホンダさんのパワーを感じています。決勝は微妙なコンディションになる可能性がありますが、これまで全戦でポイントをゲットしているので、最終戦もポイント獲得を目標にし、上位を狙います。
大立 健太
36号車エンジニア
ガレージからの持ち込みセッティングは良かったと思っています。ユーズドタイヤで走り出してもらって、デグラレーション(グリップ性能低下)が激しいというので、早めにニュータイヤをセットして、練習走行の周回を重ねてもらいました。しかし、午前中の練習走行のコンディションは難しくて、路面コンディションの変化とニュータイヤの投入時期でタイムアップできたり、できなかったりという結果になってしまっていました。うちは投入が早過ぎたかなという感じで、最後にコンディションが好転していても、タイムアップが思うように行かなかった。予選ではQ1を突破でき、バランスは良いというので、そのままQ2に送り出しましたが、コースインしてすぐに、タイヤからバイブレーションがあるという報告が入り、スプーンコーナーでも攻めきることができなかったと言っていました。決勝は、ウエットコンディションの可能性があります。ジュリアーノは、ウエットコンディションを沢山経験していますし、雨がらみでは順位を上げてきています。ウエットでも、ボクがセッティングでミスさえしなければ、順位を上げてフィニッシュしてくれると信じています。
小枝 正樹
37号車エンジニア
走り出しの練習走行からバランスも悪くなく、セッティングの何かを大きく変えなければならないという状況ではなかったです。より良い状態、よりタイムアップできる材料を探りながらトライしました。周りのタイムアップがそれほどでもなかったので、オリジナルのセッティングに戻した部分もありました。Q1、Q2のトップタイムは嬉しかったですね。Q3はセッティングの変更は一切せず、莉朋に頑張ってもらいました。ちゃんとコンマ2近くタイムアップして帰ってきてくれたのですが、ホンダエンジン勢の速さは凄かった。Q2が終わった時点で初のポール獲得という期待はありましたが、そう甘くはなかったですね(笑)。Q3で陽が陰って、路面温度が下がって、タイヤのパフォーマンスとしてタイムが出やすい状況でしたが、トップ5のタイムアップは、それだけではなかったと思います。Q2まで良くて、Q3でトップが取れない裏には何かがあると思うので、それを見つけることが、今後の大きな課題ですね。決勝のスタート時のコンディションがどうなるか心配ですが、一度走っている鈴鹿ですから、そのデータを活かしながらセットしたいと思います。
東條 力
チーフエンジニア
走り出しは莉朋、ジュリアーノの2台ともにとても良かったですね。ガレージから持ち込んだセッティングの方向性が良かったということですね。練習走行の状況を見ていれば、予選もかなり行けるのではないかと思っていました。莉朋は、Q1、Q2でグループのトップタイム。着実にタイムも縮めていました。Q1からQ2でコンマ3、Q2からQ3でコンマ2近くタイムアップして順調ですね。しかし、ホンダエンジン勢の上げ方はすごかった。莉朋は、トヨタエンジン勢ではトップでしたが、6番手ですから、パワー勝負で負けてしまった予選でしたね。セッティング面では悪くはなかったと思いますから、鈴鹿でこの位置にいるのはドライバーとしても自信になります。一方36号車のセッティングの主眼は、ジュリアーノが乗り易く、タイムが出せるもの。やはり一貴とは違いますから、もう一歩攻める方向性のセッティングを施すには彼自身がもう一歩ステップアップしなければなりません。よって、Q2まで進出できたのは、頑張ったなという評価です。鈴鹿は一度経験があるので、Q3へ進出して欲しかったですが、これが彼の予選パフォーマンスですね。決勝の追い上げに期待です。
舘 信秀
チーム監督
このところ土曜日の走り出しから苦戦することが多かったが、最終戦にして練習走行の滑り出しはとても良かった。宮田莉朋もジュリアーノ・アレジも予選に向けての準備が着々と進んでいると嬉しく見守っていた。そして予選。莉朋は期待通りにQ1、Q2でグループトップタイムを叩き出してくれた。彼自身初となるポールポジションを期待していた。しかし、Q3でタイムアップしたのに6番手。莉朋の前には5台のホンダエンジンドライバーたち。Super Formulaにおいてもホンダエンジンの強さが発揮された。しかし、トヨタエンジンの最上位から決勝をスタートする。前戦では、6ポジション上げてフィニッシュしているので、今回もそれを期待しよう。ジュリアーノは5回目の参戦。このカテゴリーで鈴鹿はすでに経験しているので、彼も予選上位を目指していたが、このトップカテゴリー、それも終盤に入って各チームが僅差でアタックしている中ではそう簡単ではなかった。終わってみれば、彼にとって一番悪いグリッドから決勝に臨むこととなった。莉朋と共に順位アップを望んでいる。
決勝:レース内容
2021年シーズンの最終戦。午前中の雨が上がって、午後の決勝前には陽が射し、コースコンディションはドライ。しかし、フォーメーションラップの際に雨がパラついた。幸いコンディションに影響は無く、スタートが切られた。スタート直後から激しい順位争いが展開された。反応良くスタートを切ったKuo VANTELIN TEAM TOM’S 37号車の宮田莉朋だったが、1コーナー手前までに順位アップできず、また思ったようなライン取りもできずに順位を3つ下げてしまった。36号車のジュリアーノ・アレジは、スタートポジションをキープし、その後ポジションアップ。宮田は、4周目にスプーンカーブでスピン。最後尾まで下がってしまった。アレジは、タイヤ交換後に10位へ、その後二つポジションをアップして8位フィニッシュ。宮田は14位でレースを終えた。
●午前中の練習走行は雨、ウエットコンディション。宮田5番手、アレジ14番手。
●決勝の時刻が近づくにつれて天候は好転。ドライコンディションとなった。決勝直前の8分間のウォームアップでドライセットアップと最終チェックを行った。
●宮田のスタート時の反応は良かった。しかし、イン側グリッドからのスタートで、1コーナーまでに前に詰まって順位アップできず。逆に順位を落としてしまった。1周目からリヤのグリップ不足を感じて苦しい展開となった。そして4周目にスピン。最後尾へ。
●アレジは、スタートポジションをキープ。徐々に順位アップ。10周でピットインしてタイヤ交換。10位へ。16周目に9位へポジションアップ。20周目に8位まで上がった。
●宮田は後続集団の中ではハイペースに順位アップしたが、14位まで挽回するのが精一杯だった。このシーズン初めて、ポイントをゲットできずレースを終えた。
●アレジは、自己最高位の8位フィニッシュを果たした。
Driver | Car No. | Race / Fastest Lap |
ジュリアーノ・アレジ | 36 | P8 / 1’42.392 |
宮田 莉朋 | 37 | P14 / 1’42.173 |
決勝:ドライバー・エンジニアコメント
ジュリアーノ・アレジ
36号車ドライバー
スタートは良かったと思う。1周目からすごいバトルの中で走っていて順位を上げることはできなかった。タイヤも使い過ぎてしまって、すぐにデグラレーションがひどくなってしまって、ミニマムラップでピットインすることになった。アウトラップはタイヤがグリップしてくれなくて大変だったけど頑張った。その後もバトルすることが多かったので、タイヤを痛めることが多かったかな。でも、しょうがない。そうしないと順位アップできないから。順位を上げることができて、ポイントを取ることができたのは良かったけど、チームにとっては満足な結果ではなかったと思う。それは、ボクの勉強がまだ足りなくて、もっとパフォーマンスを上げなくてはならない部分だと思っている。レースの最初は、頑張って順位を上げようとしてレイトブレーキ、早めのアクセル、トラクションでタイヤをいっぱい使った。それで一気にデグラレーションが進んでしまった。勉強がもっと必要。予選のポジションアップと共にもっと勉強して良い結果を出して、チームのためにもっと速くなりたいと思いました。
宮田 莉朋
37号車ドライバー
スタートの反応は良かったのですが、その先でタイヤの食いつきがあまり良くなくて、2台に抜かれてしまった。リヤタイヤのウォームアップが全然良くなくて、グリップしてくれなくて、スプーンカーブでいきなりスピンしてしまい、どうしてそうなってしまったのか、とても不思議です。雨の影響があったのかどうかはわかりません。スプーンだけではなくて1周ずっとリヤがグリップしてくれなくて、ずっとリヤと格闘して走っていたという感じです。本当に苦しくて、大変でした。ピットインしてタイヤを変えたら、その状況は良くなったのですが、やはりリヤタイヤのグリップは良くないという感じはありました。どうして、これほどマシンの感じが変わってしまったのかを調べて分析しないと決勝を戦えないと思います。ネガティブな要素を抱えながら決勝に臨んだのは確かです。納得いく状態でグリッドに着けませんでしたから。セッティングは、チャレンジしてみようという要素もあったので、それが裏目に出たのかどうかもチェックしたいです。最終戦は唯一ポイントゲットできずに終えてしましました。今シーズンの結果を分析して、来シーズンもチャンスをいただければ頑張りたいと思います。
大立 健太
36号車エンジニア
順位アップしてレースを終えることができました。直前のスタート練習があまりうまくできなくて、それをどう対処しようか悩んでいました。そんな中でしたが、ジュリアーノはかなり気合も入っていて、とても頑張ってくれたと思います。実際スタートの出だしはまずまずでした。数周してデグラレーションが酷いという報告が入ったので、ミニマム(10周)でピットに入れようと思っていました。直前を走っていた阪口晴南選手がステイアウトしたので、予定通りミニマムで入れて、その後は安定してラップしてくれたのですが、ラップタイムはあまり良くなくて、それは集団や前車との接戦というだけではなく、マシンのセットアップのパフォーマンスが足りなかったと反省しています。ピットイン後のアウトラップで頑張ってくれて、順位アップしてくれたし、バトルしても無事に帰ってきてくれる。その点は安心して見ていられるし、負けないという心は人一倍強いと思います。5ポジションアップで8位は頑張ってくれた結果ですが、マシンのパフォーマンスがもっと良ければ、もっと上でフィニッシュできたので、満足はしていません。予選結果が良ければ表彰台も見えたのかなと。それも課題ですね。
小枝 正樹
37号車エンジニア
決勝直前8分間のウォームアップで決勝のドライセットを決めなくてはならなかったのですが、それがうまくはまらなかったというか、それが尾を引いてしまってペースアップできなかったようですね。短時間で精一杯ドライコンディションの対処を行ったのですが、裏目に出てしまった部分もありましたね。スタートで集団の中に入ってしまって順位アップならず、その直後からグリップしないという報告があって、スピンもしてしまった。雨が降っていたかもという可能性がありますが、それよりも全体にグリップ感がなくてスピンに至ってしまったようです。タイヤとのマッチング、セッティングに来シーズンに向けた新たな課題が出た最終戦でありました。ピットインしてタイヤ交換してもラップペースが上位陣のようには行かなかった。それは、トータルパフォーマンスが足りなかったことを示しています。エンジンの吹き上がりにも気になる点があったと言っていますが、同じトヨタエンジンユーザーがどうであったのかは、今後細かなチェックが必要になってきます。難しいコンディションの中でどうタイヤを使って、安定したタイムで走り、タイムアップするかを来シーズンの課題としなければならないと思います。
東條 力
チーフエンジニア
まず、ジュリアーノは期待以上の結果を出してくれましたね。スタートで順位アップできたように見えたのですが、1周終わってみたら、スタート順位と同じだったので、無理せず、1周目の攻防、1、2コーナーでの接触を避けていたのかもしれません。それでも着実に順位アップしてポイントも獲得してという点では上出来。随所でバトルを演じ、並走して1、2コーナーをクリアし、シケインでもバトルしていました。本当に頑張りました。厳しいことを言えば、ラップタイムがトップグループから1秒近く遅いのが今の彼のパフォーマンスです。それが改善されれば、トップグループとバトルを演じられるのではないでしょうか。
そして莉朋・・・。ダメでしたね。唯一スピンを喫してしまったというのも大きな問題ですね。コースの一部で雨の影響があったのかもしれませんが、セッティングも合わなかったのか・・・。最後尾からの追い上げは当然見せましたが、集団の中ではタイムアップすることができずに終えてしまった。スタート順位から考えれば優勝の可能性があった訳です。莉朋は常に表彰台に立てる力があると信じているので、今回の結果は残念でした。
舘 信秀
チーム監督
莉朋は、表彰台を獲得できるのではないかと思っていた。しかし、意に反して序盤、それも4周目にスピンして最後尾にまで順位を下げてしまうという最悪の展開となってしまった。微妙なセッティングの変更によって、このような状況に陥ってしまうのだから難しい。何とか順位を挽回したが14位。彼は常にポイントを獲得してフィニッシュしていたが、シーズンエンドのレースで初めてポイントを獲得することができなかった。ジュリアーノは、着実に順位を上げていたし、随所でバトルを展開していた。コーナーで並ばれても怯むことなく、順位を守り、なおかつ争っているドライバーのラインを妨げることなく走行する様は素晴らしい。できれば、来季もこのカテゴリーで活躍を期待したいドライバーだ。フルシーズン戦えることになれば、飛躍できるのではないかと思っている。
チャンピオンチームの無限と野尻選手。そしてチームチャンピオンとなった星野監督のインパルに対しておめでとうの言葉を贈りたい。来シーズンは我がチームがタイトルを獲得すべく、すでに準備を開始している。ワンシーズン通して応援をいただき、ありがとうございました。御礼申し上げます。